第70章：知らぬ間に、姑を攻略した

「夕食をあまり食べなかったようだね。その鶏肉は取っておくから、食べたくなったら山本おばさんに温めてもらいなさい」

「ありがとう、必要ない」藤原時央は冷たく断った。

「食べないならそれでいい！」藤原親父は背を向けて去っていった。

藤原時央は食卓で時田浅子が彼に反論した口調を思い出し、不快感を覚えた。

離婚の件は、おそらくスムーズにはいかないだろう。

あの女は、彼が植物人間だった時でさえ結婚を望んだのだ。

今、彼が目覚めたのに、彼女が離婚に同意するはずがない！

彼はファイルを閉じると、パソコンの画面には黒いシステム標準の壁紙が表示された。

以前あった少女の壁紙は、すでに彼によって変更されていた。

……

時田浅子は目の前の一軒家を見つめ、少し呆然としていた。

かつてニュースのヘッドラインを飾った家が、藤原家によって購入されていたとは。

これは雲都では間違いなく唯一無二の豪邸だった。

なるほど、当時誰もこの家を誰が買ったのか報道する勇気がなかったわけだ。

「浅子、何をぼんやりしているの？入ってきなさい」大木嵐は時田浅子に手招きした。

時田浅子はすぐに中に入った。

大木嵐は暗証番号ロックを数回押した後、「さあ、指をここに置いて」と言った。

時田浅子は指を置いた。

「指紋登録完了、ご主人様をお迎えします」

ドアロックから機械的な女性の声が聞こえ、時田浅子はびっくりした。

「私は雲都の出身で、子供の頃に両親と一緒に帝都に行き、時央のお父さんと結婚して帝都に残ったの。時央が海外から戻ってきて、雲都で療養することになったから、この家を買ったわ。これからはあなたの家よ」大木嵐は優しく言った。

時田浅子はこの家に住むことができるだけだと思っていた。

大木嵐がすでに名義変更の手続きを進めていることは想像もしていなかった。

これは藤原時央が目覚めたことへの、彼女から時田浅子への感謝の贈り物だった。

時田浅子は宮殿のように豪華絢爛な邸宅を見て、思わず彼女と母親の小さな家を思い出した。

小さな3LDKで、部屋にベッドを置くだけでもう狭く感じるほどだった。

二つの寝室と一つの書斎。

そんな家でさえ母親の貯金を使い果たし、さらに25年のローンを背負っていた。