彼女の祖父は、ずっと藤原家のことを彼女に話したことがなかった。臨終の際になってようやく、この件について少し話した。
ただ、その時は誰もこのことを気にかけていなかった。
「浅子、お前の祖父は私のことを話さなかったのか?」
「祖父は臨終の際に、藤原という姓の、とても良い友人がいて、当時婚約を結んでいたと言っていました。もし藤原家の人が婚約を履行しに来たら、必ず藤原家に嫁ぐようにと言われました。」
「まだ良かった、あの老いぼれ、約束を覚えていて、裏切らなかったか!」老人は安堵のため息をついた。
「当時、どんなに引き留めても、お前の祖父は帝都に残ろうとしなかった!彼が権力者に取り入ると陰口を叩かれることを恐れていたのだと分かっている。彼は雲都という小さな場所に戻って、気ままに暮らすと言った。」
「しかし、彼が雲都に戻った後、私と連絡を取ろうともしなかった!帰るなら帰るで、私との関係を絶つつもりだったのか?毎回私が彼を探すと、彼はただ礼儀正しく、さらには意図的に私を遠ざけていた。長い間、彼に迷惑をかけることを恐れて、私も彼に連絡しなくなった。」
「おじいさま、私の祖父はきっと、家族が彼とあなたの関係を知って、何か企むことを恐れていたのでしょう。」時田浅子は優しく諭した。
「その通りだ!お前のあの父親は、お前の祖父に心配をかけっぱなしだった。彼は永遠に知らないだろうが、彼の成功は偶然ではない。藤原家の少しの助けがなければ、彼がまともな人間に見えるようになれたはずがない!」
時田浅子は驚いた。なんと、藤原家は裏で林聡明を助けていたのだ。
「この件で、お前の祖父は私を責めた。私が関わるべきではなかったと。林聡明がお前の母親と離婚するなんて誰が知っていただろうか!」老人は深いため息をついた。
そう言えば、浅子と彼女の母親がこれほど長い間、苦労して日々を過ごしてきたことに、自分にも責任があるということだ!
「母は離婚後、私を連れて雲都を離れました。祖父が重病になって初めて、私と母は祖父に最後の別れを告げに来ました。幼い頃から、祖父は私を一番可愛がってくれました。臨終の際にこの婚約のことを話したのは、私に良い行き先を見つけたかったからだと思います。」
老人の気持ちは、また少し重くなった。
藤原時央のあの小僧は、頼りになるのだろうか?