第132章:私に手伝って欲しいの?

「何か手伝いが必要?」

「お風呂に入りたい」

「ダメ!それは手伝えません!」時田浅子はすぐに拒否した。

「君は、私に体を洗ってほしいと思ったのか?」藤原時央は問い返した。

時田浅子の顔が一瞬で赤くなった。「私の理解が間違っていたの?」

「お湯を少し入れてほしいだけだ」藤原時央はゆっくりと言った。

時田浅子は恥ずかしくなった。彼の足はまだ回復していないのではないか?

彼は立つこともできないのに、自分でお風呂に入れるの?

でも、それは彼女が心配することではない。

「お湯を入れてきます」時田浅子は部屋に向かって歩き出した。

部屋の中は暗く、書斎の机の横にだけ灯りがついていた。時田浅子は部屋のすべての灯りをつけると、部屋全体が明るくなった。

彼女は小さなソファに目をやった。ちょうど彼女が寝るのにぴったりのサイズだった。

考えるのはやめよう!

彼女はこの考えを口にした結果が想像できた。

彼女はただソファで寝たいだけなのに、藤原時央は彼女が彼と寝たいと思っていると勘違いするに違いない!

バスルームに行き、蛇口をひねってお湯を出した。

藤原時央は車椅子に座り、バスルームからの水の流れる音を聞いていた。

彼の足は、少し感覚が戻ってきていた。

あの日、時田浅子と接触した後、彼は彼女の温もりを感じ、リハビリトレーニングも加わって、何とか立ち上がれるようになった。

しかし、両足はとても力がなく、リハビリ補助器具なしでは、せいぜい5分ほど立っているのがやっとで、壁につかまれば5歩ほど歩けるくらいだった。

だから、彼はまだ車椅子に座っていた。

時田浅子と一緒にいる時間は、音声を聞く必要もなく、頭痛もせず、普通の人と何も変わらなかった。

これは科学でも説明できないかもしれない。

白川健斗は彼の足が回復すると確信していた。彼はこのことで時田浅子と何か関わりを持ちたくなかった。

離婚手続きが済んだら、時田浅子が望もうが望むまいが、彼は彼女に補償金を渡すつもりだった。彼女への謝礼として。

突然、水の流れる音が止み、時田浅子がバスルームから出てきた。

「藤原若旦那、お湯を入れておきました」

「ありがとう」藤原時央は静かに礼を言った。

「どういたしまして、では出ていきます」時田浅子は振り返ることなく外に向かって歩いた。