緑色のパーカーを着た男が彼女たちの方向に歩いてきた。
彼の名前は藤田彰、和芸ではかなり有名だった。
彼も和芸の学生だが、卒業して二年以上経った今でも、よくキャンパスに出入りしていた。
彼は金持ちの二世で、家族の投資は映画やテレビ業界にも及び、和芸の多くの女子学生が彼に群がっていた。
彼は恋多き男だったが、彼の言葉によれば、彼が交際する恋愛は全て真剣なものだった。
誰と一緒にいても、その時最も愛しているのはその相手だと。
別れた後は、完全にシームレスに次の相手へと移行できた。
彼はクズ中のクズだったが、付き合った彼女たちには、お金でもリソースでも、彼が与えられるものは惜しみなく与えた。
そのため、多くの女子学生が積極的に彼を釣ろうとしていた。
藤田彰を釣り上げることは、成功への近道を見つけたも同然だった。
時田浅子は藤田彰が彼女の方に早足で歩いてくるのを見て、明らかに彼女を目指していることがわかった。
「水田潔子、私先に帰るね!」時田浅子は水田潔子に一声かけると、すぐに身を翻して校門の方へ歩き出した。
藤田彰は早足で追いかけ、数歩で時田浅子に追いついた。
彼はポケットから赤いバラを一輪取り出し、時田浅子の前に差し出した。
「今夜、君をある場所に連れて行きたい」藤田彰はまるで時田浅子が断らないと確信しているかのように、直接切り出した。
「ごめんなさい、今夜は予定があるの」
「時田浅子、人を焦らすゲームは数回までにしておけ。やりすぎると、興味を失わせることになるぞ」
藤田彰は数ヶ月前から時田浅子に目をつけていた。
彼は何度か明確に意思表示したが、時田浅子は彼の誘いに乗ろうとしなかった。
時田浅子は外に向かいながら、時間を確認した。
この時間なら、藤原時央も彼女を迎えに来ているはずだ!
「時田浅子、もうすぐ三年生だろう?君のクラスの山田奈々はもう有名になったのに、君は彼女よりずっと優れているのに、まだ頭角を現していない。その理由が何かわかるか?」
時田浅子は足を止め、藤田彰を見つめた。
「藤田彰、勘違いしないで。私はあなたを焦らしているわけでもないし、あなたと付き合いたいとも思っていない。もう私に構わないでください!もしまた私に付きまとうなら、ハラスメントで訴えますよ!」