老爺子は時田浅子を門口で待ちながら見張っていて、浅子を見るとすぐに迎えに行った。
「浅子が帰ってきたよ!」
「おじいさま」時田浅子は声をかけた。
「時央は会社に行ったのか?」
「はい」時田浅子は老爺子の腕を支えながら家の中へ歩いていき、心の中で言葉を選びながら、どうやって老爺子にこの考えを諦めさせようかと思案していた。
「おじいさま……」
「気をつけて!これらは全て若奥様のものです」安藤さんの声が時田浅子の言葉を遮った。
時田浅子は、リビング全体に物が溢れていることに気づいた。
「浅子、これは私たちが雲都で買ったものだよ。もう届いたんだ。それに、私はさらにいくつか追加で買い足したんだ」
時田浅子は驚きの表情を浮かべた。雲都で買ったあれらの品々は、自分の一生使い切れないほどだと感じていたのに、老爺子はなぜまたそんなにたくさん買い足したのだろう!
驚きが収まらないうちに、彼女はもう一つの問題に気づいた!
安藤叔父さんがこれらの品物を全て藤原時央の部屋に運び込んでいたのだ。
「浅子、今は時央の足が不自由だから、二階には住めない。だから当分の間、一階に住むことになる。ちょうどいい機会だから、二階の部屋も新しく装飾し直そうと思っているんだ」老爺子の口調は、異議を許さないものだった。
「おじいさま、私は……」
「浅子、おじいさんはもう年だ。あとそう長くは生きられない。もし何か心残りがあれば、安らかに死ねないよ!」
時田浅子の言葉は全て飲み込まれた。
「浅子、さっき何か言いたかったのかい?」老爺子はわざと尋ねた。
「いいえ、何でもありません」時田浅子は首を振った。
老爺子は時田浅子の手を引き、老獪な笑みを浮かべた。
「さあ、果物を摘みに行こう。さくらんぼが熟したから、鳥に全部食べられる前にね」
「はい」時田浅子はかごを持って老爺子の後ろについていった。
夕食の時間になっても、藤原時央は帰ってこなかった。
十時半になってようやく彼は戻ってきた。
老爺子はまだリビングに座っていた。
「十時半までに帰ってくるように言ったのに、一分も早く帰ってこないつもりか!」
「会社にはあれだけの問題が山積みなんだ。それとも藤原社長に再び出てきて指揮を執ってもらうか?」藤原時央は反問した。
老爺子は彼の口調を聞いて、頭に血が上った。