第175章:緑に心が慌てる

藤原時央は一人でエレベーターの中に立ち、その広告を食い入るように見つめていた。

純粋な緑色に、一滴の水滴が添えられ、その水滴の中には翠緑の小さな草が一本。

本当に緑だ!

エレベーターが止まると、彼は車椅子を動かして出た。

秘書の鈴木真弦がすぐに迎えに来た。

「藤原社長、会議に必要な書類はすべて準備できています」

「エレベーターの広告をすべて取り外せ!」藤原時央は冷たい声で命じた。

「広告ですか?」鈴木真弦はすぐには反応できなかった。

藤原時央はすでに会議室へ真っすぐ向かっていた。

鈴木真弦はまだ呆然としていた。

社長がどうしてこんな些細なことを気にするのか?本当に理解できない!

……

時田浅子が戻ると、おじいさんはすでにたくさんの美味しい料理を用意していた。

食事の後、彼女はおじいさんと少し散歩をし、まだ7時頃だった。

「おじいちゃん、もう付き合えないわ。仕事に行かなきゃ」時田浅子は声をかけた。

「行っておいで、あまり無理しないように、休息も大切だよ」おじいさんは優しく言い聞かせた。

「はい!」時田浅子はすぐに気をつけの姿勢をとり、真面目に返事をした。

この仕草に、おじいさんは笑みを浮かべた。

「浅子のこの子は、なんてみんなに好かれるんだろう」おじいさんは言った後、深いため息をついた。

「はぁ、時央が浅子を引き止められるかどうか、わからないものだ」

時田浅子は部屋に戻るとすぐに、携帯の動画を開いた。

動画の総時間はわずか46秒だった。

カメラは山田奈々と彼女に正面から向けられていた。

12秒目で、山田奈々が突然手を伸ばし、彼女の手を引っ張り、それから偽の転倒をした!

時田浅子は一時停止を押した。この動画こそが最も有力な証拠だ!

しかし、彼女はこれをすぐに公開するつもりはなかった。

山田奈々がこんな大芝居を打ったからには、次の手も必ずあるはずだ!

動画を何箇所かにバックアップした後、時田浅子は柳裕亮にメッセージを送った。

【先輩、動画を見る時間がやっとできました。この動画を送ってくれて本当にありがとう】

すぐに柳裕亮から返信が来た。

【礼には及ばないよ。たまたま動画を撮っていただけだし、誰であっても同じことをしたと思うよ】

男子寮。

数人の男子学生が柳裕亮のLINEの着信音を聞いた。