藤原時央は一人でエレベーターの中に立ち、その広告を食い入るように見つめていた。
純粋な緑色に、一滴の水滴が添えられ、その水滴の中には翠緑の小さな草が一本。
本当に緑だ!
エレベーターが止まると、彼は車椅子を動かして出た。
秘書の鈴木真弦がすぐに迎えに来た。
「藤原社長、会議に必要な書類はすべて準備できています」
「エレベーターの広告をすべて取り外せ!」藤原時央は冷たい声で命じた。
「広告ですか?」鈴木真弦はすぐには反応できなかった。
藤原時央はすでに会議室へ真っすぐ向かっていた。
鈴木真弦はまだ呆然としていた。
社長がどうしてこんな些細なことを気にするのか?本当に理解できない!
……
時田浅子が戻ると、おじいさんはすでにたくさんの美味しい料理を用意していた。
食事の後、彼女はおじいさんと少し散歩をし、まだ7時頃だった。
「おじいちゃん、もう付き合えないわ。仕事に行かなきゃ」時田浅子は声をかけた。
「行っておいで、あまり無理しないように、休息も大切だよ」おじいさんは優しく言い聞かせた。
「はい!」時田浅子はすぐに気をつけの姿勢をとり、真面目に返事をした。
この仕草に、おじいさんは笑みを浮かべた。
「浅子のこの子は、なんてみんなに好かれるんだろう」おじいさんは言った後、深いため息をついた。
「はぁ、時央が浅子を引き止められるかどうか、わからないものだ」
時田浅子は部屋に戻るとすぐに、携帯の動画を開いた。
動画の総時間はわずか46秒だった。
カメラは山田奈々と彼女に正面から向けられていた。
12秒目で、山田奈々が突然手を伸ばし、彼女の手を引っ張り、それから偽の転倒をした!
時田浅子は一時停止を押した。この動画こそが最も有力な証拠だ!
しかし、彼女はこれをすぐに公開するつもりはなかった。
山田奈々がこんな大芝居を打ったからには、次の手も必ずあるはずだ!
動画を何箇所かにバックアップした後、時田浅子は柳裕亮にメッセージを送った。
【先輩、動画を見る時間がやっとできました。この動画を送ってくれて本当にありがとう】
すぐに柳裕亮から返信が来た。
【礼には及ばないよ。たまたま動画を撮っていただけだし、誰であっても同じことをしたと思うよ】
男子寮。
数人の男子学生が柳裕亮のLINEの着信音を聞いた。