第191章:藤原さまの恋はまだ始まったばかりで終わってしまった

藤原時央はこの話を聞き終わると、手を伸ばしてネクタイを引っ張った。

この車の中はなぜこんなに蒸し暑いのか?息ができない!

江川楓は後ろの会話を聞いて、藤原若旦那に同情の涙を流した。

この恋愛関係は、始まったばかりで終わってしまうのだろうか?

若奥様は本当にあのクラスメイトが好きなのだ!

「江川楓、なぜそんなに暖房を強くしているんだ?」藤原時央は江川楓に怒鳴った。

江川楓:……

彼はすぐに暖房を切った。

藤原若旦那はやり場のない怒りを抱えているのか?

自分の妻が他の男と両思いになったなんて、意外だろう、刺激的だろう?

彼は、藤原若旦那はまったく同情に値しないと思った。むしろ、自業自得のような気がした。

「お爺さんが与えた期限はあと二ヶ月ちょっとだ。私はあなたが一時的にあの男性と距離を置いてほしい。私との離婚手続きが終わった後で、あなたたちの関係を再開すればいい。」

「わかりました。」時田浅子はすぐに同意した。

彼女と柳裕亮は実際に付き合っているわけではないので、藤原時央の要求は彼女の思惑通りだった。

この二ヶ月余りの間、彼は毎日学校に彼女を迎えに行くことになるが、彼女も嘘がばれるのが怖かった。

車はゆっくりと停車した。

時田浅子が車から降りようとしたとき、藤原時央が突然口を開いた。

「江川楓、私を会社に送る必要はない。車椅子を準備してくれ。」

「はい。」江川楓はすぐに車から降りて準備を始めた。

時田浅子も降りて手伝い、傘を持って車椅子の横に立った。

藤原時央は車のドアを支えながら車椅子に座り、様子を見ると、少し苦労しているようだった。

「藤原さま、白川先生を呼んだ方がいいですか?」時田浅子は尋ねた。

彼の状態はあまり良くなさそうで、会社にも行かないなんて!

「必要ない。」藤原時央は言うと、車椅子を動かして中庭へ向かった。

時田浅子はすぐに傘を持って彼の後を追った。

……

午後4時過ぎ。

山田奈々は新しいドラマの監督、プロデューサー、主演俳優たちと一緒にインタビューを受けていた。

彼女の頭には、まだガーゼが貼られていた。

記者たちはすぐに彼女に注目した。

脇役がこれほど注目を集めるのは、プロデューサーにとって望ましい光景だった。

この二日間、山田奈々の一件で、新しいドラマも良い露出を得ていた。