第204章:藤原若旦那が頑張りさえすれば、どんな声でも聞けるのでは

時田浅子が何の期待も持っていなかったとき、藤原時央の声がようやく響いた。

「彼が君を悩ませないようにするだけでいいのか?」

「うん」時田浅子は頷いた。彼女は藤原時央の言葉に隠された意味を聞き取れなかった。

しかし江川楓は藤原若旦那の言葉に含まれる冷酷さを感じ取った。

「わかった」藤原時央は頷き、それ以上は何も言わなかった。

時田浅子はまだ少し信じられなかった。彼は承諾したのだろうか?

「ありがとう、藤原若旦那」彼女の目は感謝の気持ちで満ちていた。

藤原時央は彼女の潤んだ瞳を見つめ、心に微かな波紋が広がった。彼はすぐに視線をそらした。

あの潤んだ瞳にこれ以上見入っていたら、骨まで溶けてしまいそうだった。

時田浅子はまだ少し心配で、後部座席の窓から再び外を見た。

あの車がぴったりと後をつけていた。