第228章:一人も逃がさない

藤原時央は手を上げて斉藤若春を支えた。

斉藤若春の反応は、彼の予想を完全に超えていた。

「大丈夫か?」彼は尋ねた。

「大丈夫よ」斉藤若春は首を振ったが、藤原時央の腕をしっかりと掴み、頭も自然と藤原時央の胸に寄りかかっていた。まるで気を失いそうな様子だった。

時田浅子は二人を呆然と見つめていた。

斉藤若春が駆け寄って彼女の代わりに平手打ちを受けるなんて、思いもよらなかった!

藤原時央は斉藤若春を支える手を離さなかったが、少し後ろに下がった。見た目は斉藤若春がまだ彼の腕の中にいるようだったが、実際には二人の間には距離があった。

斉藤若春は好機を逃さず、すぐに顔を上げ、時田浅子を心配そうに見つめた。

「時田浅子さん、怪我はない?」

「大丈夫です」時田浅子は首を振り、斉藤若春に尋ねた。「斉藤さんは?」