一晩中、時田浅子はよく眠れなかった。
翌日、目覚まし時計が鳴って、やっとぼんやりと起き上がった。洗面所で鏡を見ると、目の下のクマがひどく、全体的に調子が悪そうだった!
洗顔を済ませ、薄化粧をすると、少し元気に見えるようになった。
1階に降りると、藤原時央と老人がすでに食堂に座っているのが見えた。
今や彼女は藤原時央を見るだけで腹が立った!
食堂に入り、藤原時央から最も遠い席を選んで座った。
藤原時央は彼女を一瞥し、食事を続けた。
老人は二人を見て、明らかに雰囲気がおかしいと感じた。しかも、離婚する気配もなさそうだった。
つまり、誰かが後悔し始めたのか?
「後で時田浅子をレコーディングスタジオに送る」藤原時央が突然口を開いた。この言葉は老人に向けられたものだった。
時田浅子はイライラした。
彼女の意見を聞かなくていいのか?
「結構です!藤原若旦那に迷惑をかけたくありません」時田浅子は自ら口を開いた。
「迷惑ではない」藤原時央は淡々と応じた。
「でも、あなたに送ってほしくないの!」時田浅子は遠回しな言い方をやめて直接答えた。
彼女は箸を置き、怒りで食事ができなくなった。
藤原時央は顔を上げて彼女を見つめ、密かに歯を食いしばった。
「浅子、怒らないで。彼に送ってもらわなくても、おじいちゃんが送るよ」老人は溺愛するような表情で言い、藤原時央の方を向くと、表情がすぐに冷たくなり、藤原時央を厳しく睨みつけた。
今になって積極的に世話を焼こうとするのか、以前のあの傲慢な態度はどこへ行ったのだ?
「私が送らなくてもいい。昼に迎えに行くから、一緒に食事をしよう。必ず来てくれ、会わせたい人がいる」藤原時央の口調は反論を許さないものだった。
言い終わると、彼は車椅子を動かして去っていった。
時田浅子は彼の背中を見つめ、密かに歯ぎしりした。
「浅子、彼に腹を立てないで。食べなさい、食べなさい。後で薬も飲まないといけないから、もっと食べないとだめよ」老人は箸を時田浅子の手に置き、優しく諭した。
時田浅子は無理して少し食べ、箸を置いた。
「おじいちゃん、本当にもう食べられないわ。レコーディングスタジオに行きましょう」
「いいよ、いいよ。卵と牛乳を持って行こう。それと果物も少し。休憩時間に食べたくなったら食べるといい」