藤原時央は電話を切り、心の中も混乱していた。
帝都から浜松市へ。
これは彼にとって、兜を脱ぎ捨て、慌てて逃げ出すことになるのだろうか?
彼の心は突然イライラし始め、パソコンを閉じて顔を上げると、鈴木真弦の観察するような視線と目が合った。
鈴木真弦はすぐに頭を下げ、藤原時央と視線を合わせる勇気がなかった。
「今日はここまでにしよう。」
「はい、藤原若旦那、では私は先に部屋に戻ります。おやすみなさい。」鈴木真弦は挨拶をして、退出した。
部屋を出るとすぐに、彼はまるで狂ったように足踏みを始めた。
何かある!藤原若旦那の恋愛事情に絶対何かある!
彼は今、藤原若旦那のために上手くカバーしたのだろうか?!
電話の向こうの女の子は一体誰なんだろう、藤原若旦那の声があんなに優しくなるなんて!
本当に気になる!
時間があったら江川楓に聞いてみよう、あいつなら絶対知っているはずだ。
……
時田浅子がちょうど横になったとき、WeChatで友達リクエストが届いた。
相手のメモ:斉藤若春。
少し迷った後、この友達申請を承認した。
斉藤若春はすぐにメッセージを送ってきた:【時田浅子さん、こんにちは。WeChatで繋がれば、連絡も取りやすくなりますね。】
斉藤若春の熱意に対して、時田浅子は居心地の悪さを感じるだけだった。
彼女はどうしても斉藤若春と友達になることができなかった。
適当な絵文字を送り返し、返事とした。
斉藤若春もそれ以上メッセージを送ってこなかった。
時田浅子はベッドに横たわったまま、まだ眠気を感じなかった。
スマホを取り出し、友達の投稿を見ることにした。
二、三件しか見ていないうちに、斉藤若春の投稿が目に入った。
【仕事中毒の彼氏を持つのは本当に最悪な経験ね。こんなに楽しい場所も一人で訪れるしかないなんて!ふん!あなたの可愛い彼女はもう怒ってるわよ、早く機嫌を取りなさい!】
添付された写真は九枚のグリッド状に並べられ、位置情報も付いていた。
浜松市。
斉藤若春も帝都にいないの?
時田浅子の頭の中にはただ小さな疑問が浮かんだだけで、それ以上は考えず、スクロールを続けた。
しばらくすると、江川楓の投稿が現れた。
時田浅子は、江川楓も浜松市にいることに気づいた。