時田浅子は急いで車椅子を起こし、藤原時央の足を安定させた。
「藤原若旦那、どうしてそんなに不注意なの?怪我はない?」
「こんな遅くに、寝ないで、何か重要なことがあるの?明朝言えないの?」藤原時央は問い返した。
「私のためにドアを開けようとして、転んだの?」
「そうだ!」
「でも、ドアは鍵がかかってなかったわ。あなたが入れって言ったから、入っただけよ」
「鍵をかけてなかったことを忘れていた」
時田浅子は彼の惨めな姿を見て、申し訳なさそうな表情を浮かべた。「ごめんなさい、藤原若旦那。起き上がるのを手伝いましょうか?」
藤原時央は自分で立ち上がろうとしたが、体を支えて試してみても、うまくいかなかった。
時田浅子は藤原時央を支え、彼に少し力を貸そうとしたが、彼はそのまま床に座り込んでしまった。
「藤原若旦那、焦らなくていいわ。今力が入らないなら、少し休みましょう」
藤原時央はうなずいた。
時田浅子は振り返ってクローゼットを探り、病院から持ち帰った小さな毛布を見つけ、少し迷った後、藤原時央の足にかけた。
「これをかけて、冷やさないで」
藤原時央は拒まなかった。
時田浅子は彼の様子を見て、少し心配になり、彼の現在の状態がどうなのか確信が持てなかった。
「藤原若旦那、あなたの足はもうかなり回復していたんじゃないの?白川先生は何か言ってた?この状態はあとどのくらい続くの?」時田浅子は静かに尋ねた。
「検査結果には問題がなかった。足は正常だ。完全に回復するのがいつになるかは、時央にも確定できない」
「こうして良くなったり悪くなったりするのは、辛いわね」時田浅子は、藤原時央の感覚が鋭すぎると感じた。
元気だった人が今のようになって、しかもあんなに優秀な人が今では立つこともままならないのに、彼がこのことで取り乱すのを見たことがなかった。
藤原時央は突然手を伸ばし、時田浅子の耳元をかすめた。
時田浅子は思わず体を後ろに反らし、背中がベッドの端に当たった!
藤原時央の顔が、突然彼女の目の前に大きく迫った!
二人の距離は、間近だった。
お互いの息が絡み合っていた。
時田浅子は自分の心臓の鼓動さえ聞こえた。
ドクドク!まるで誰かが彼女の心臓の上で、無造作に槌を振るって叩いているようだった。