十分もしないうちに、二、三十人の警備員がきちんと二列に並び、一階の外に立ち、物件管理者はさらに熱心に藤原時央の車の側まで走ってきた。
「藤原社長、私たちのこのオフィスビルを見学されませんか?」
「必要ない」藤原時央は冷たく応じた。
彼は携帯を取り出し、時田浅子の番号にダイヤルした。
時田浅子はまだネット上のニュースを見ていたとき、突然携帯が鳴り始めた。
「藤原若旦那」
「下で待っている」
「はい、すぐに行きます」時田浅子はバッグを整理して、階下へ向かった。
エレベーターが開くと、江川楓と眼鏡をかけたスーツ姿の男性の姿が見えた。
「若奥様」江川楓が声をかけた。
「奥様、こんにちは。私は鈴木真弦と申します。藤原社長の秘書です」
時田浅子は鈴木真弦の声を聞いて、「こんにちは、鈴木秘書。そんな風に呼ばないでください。私と藤原若旦那はあなたが思うような関係ではありません。時田浅子と呼んでください」