第267章:彼女は彼のスイーツ

電話の中で、数秒の沈黙があった。

時田浅子は少し後悔していた。

彼女は実際、この電話をかけるべきではなかった。

彼女と藤原時央は明日離婚するのに、自分の母親を喜ばせるためだけに、藤原時央に病院へ付き添ってもらうなんて、なんて自分勝手なのだろう。

時田浅子が口を開こうとした時、電話から藤原時央の声が聞こえた。

「鈴木君、この後、他に仕事はあるかな?」

「藤原社長、この後は特に予定はありません」鈴木真弦は急いで答えた。

藤原時央は再び電話に戻り、「時間があるよ。君はもう終わったのか?」

「私...私も終わりました」

「待っていてくれ、今から迎えに行く」藤原時央はそう言って電話を切った。

鈴木真弦はすぐに前に出て、藤原時央の机の上の書類を整理し始めた。「藤原社長、先ほどの会議でまとめた事項とプロジェクトの進捗報告は、改めて整理してお送りします」

「ああ」藤原時央はうなずいた。「先に贈り物を買って、花束も一つ注文して、病院で待っていてくれ」

「かしこまりました、すぐに手配します!」鈴木真弦はすぐに応じた。

藤原時央は車椅子を動かして事務所を出た。

鈴木真弦は周囲の驚いた視線の中で、冷静に二言だけ言った:「解散」

彼は自分を褒めたい気持ちでいっぱいだった!

なんて機転が利くんだろう?

どうやら、これからは奥様の足を掴んでおくことが何よりも大事だ!奥様は彼にとって幸運の星だ!

時田浅子は休憩室で藤原時央を待っていた。

彼女の心は葛藤に満ちていた。

今日、斉藤若春が来て説明してくれたことについて、彼女はずっと考えないようにしていたが、今、時間ができると、どうしても考えてしまう。

本当に藤原時央が言ったように、斉藤若春は彼の心理医にすぎないのだろうか?

彼女には藤原時央が斉藤若春に対して感情があるかどうか確信が持てなかった。ただ確かなのは、斉藤若春が藤原時央をとても愛しているということだ。

「時田浅子、もう考えるのはやめなさい!藤原時央が斉藤若春を愛しているかどうか、あなたには関係ないでしょ?」時田浅子は心の中で自分に言い聞かせた。

彼女がずっと望んでいたのは、ただシンプルな生活だけだった。

母が回復し、自分が好きで母と自分を養える仕事があれば、この一生を母と共に過ごすだけで十分だった!