第268章:空気の中は彼の匂いでいっぱい

時田浅子が顔を拭こうとティッシュを取り出そうとした時、藤原時央が突然彼女に近づいてきた。

「動かないで」彼の声が熱い息と共に彼女の耳元を撫で、まるで彼女に動けなくなる呪文をかけたかのように、彼女は身動きが取れなくなった。

藤原時央は指を伸ばして彼女の頬についたフィリングを少し取り、口に入れた。

一瞬で、彼の表情は非常に不快そうに変わった。

「これは何の味だ?」

「ドリアン?」時田浅子も純粋なドリアンかどうかは確信が持てなかったが、これには間違いなくドリアンが混ざっていた。

藤原時央のまるで糞でも食べたかのような表情に、彼が今食べたものが彼女の頬から拭い取ったものだということを忘れてしまうほどだった。

彼女はティッシュを一枚取り出して彼に差し出した。彼が吐き出すかと思ったからだ。