時田浅子が顔を拭こうとティッシュを取り出そうとした時、藤原時央が突然彼女に近づいてきた。
「動かないで」彼の声が熱い息と共に彼女の耳元を撫で、まるで彼女に動けなくなる呪文をかけたかのように、彼女は身動きが取れなくなった。
藤原時央は指を伸ばして彼女の頬についたフィリングを少し取り、口に入れた。
一瞬で、彼の表情は非常に不快そうに変わった。
「これは何の味だ?」
「ドリアン?」時田浅子も純粋なドリアンかどうかは確信が持てなかったが、これには間違いなくドリアンが混ざっていた。
藤原時央のまるで糞でも食べたかのような表情に、彼が今食べたものが彼女の頬から拭い取ったものだということを忘れてしまうほどだった。
彼女はティッシュを一枚取り出して彼に差し出した。彼が吐き出すかと思ったからだ。
藤原時央はティッシュを受け取り、指を拭いた。
何とか飲み込んだ。
しかし、その表情は極めて不快そうだった。
これが彼が外の食べ物を好まない理由の一つだった。口に入れるまで、その味が何なのか決して分からないからだ!
「君はドリアンが好きなのか?」藤原時央は時田浅子に尋ねた。
「うん」時田浅子はうなずいた。
「こんな味のものをどうやって食べられるんだ?」
「臭いけど美味しいのよ。臭豆腐や豆汁も…」
これらの食べ物の名前を聞くにつれ、藤原時央の表情はますます暗くなっていった。
時田浅子はそれ以上言わなかった。彼女は藤原時央をこれ以上刺激したくなかった。
藤原時央は水のボトルを取り出し、口の中にドリアンの味が全くなくなるまで飲み続け、ようやくボトルを置いた。
振り向くと、時田浅子はすでにシュークリーム全体を食べ終え、口角にはまだ少しフィリングが付いていた。
もしドリアン味でなければ、彼はもう我慢できずに彼女の唇にキスして、一緒に味わっていたかもしれない!
彼はティッシュを一枚取り出し、時田浅子に差し出した。
時田浅子が受け取ろうとしたとき、藤原時央は彼女の手を避け、直接彼女の口角を拭いた。
彼女は完全に固まってしまった。
思わず体を後ろに引いた。
彼女は本当に、藤原時央との間のこのような親密な仕草を受け入れることができなかった。