第269章:また話題になりたくないなら、動かないで

藤原時央は体を安定させ、時田浅子を見た。

時田浅子も感じていた、自分がさっき手を強く出しすぎたことを。彼女は藤原時央の頭が車のドアにぶつかる音まで聞いてしまった!

しかし、これは彼女のせいではない。

彼はさっき何をしたのか?

良く言えば無礼、悪く言えば嫌がらせ、痴漢行為だ!

藤原時央はスーツを整え、姿勢を正した。

頭をぶつけた痛みがうずくが、時田浅子がパニック反応を起こさなければそれでいい。

車内には何の音もなく、二人の呼吸音だけが交互に響いていた。

時田浅子はお菓子を片付けたが、もう食べる気分ではなかった。

車が曲がって本線に入ると、前方は渋滞し始めた。

時田浅子は携帯を取り出し、交通状況を確認した。

病院まであと30分かかる、つまり彼女はあと30分も藤原時央とこの密閉空間にいなければならない。