第276章:しっかりと包み込む

時田浅子は小さなキッチンの方向を見て、母親が先ほどの一幕を見ていたことに気づき、顔が一気に赤くなり、藤原時央に向かって強く睨みつけた。

時田秋染は三杯のジャスミン茶を持ってきて、テーブルに置いた。

「お茶を飲んで、さっぱりしなさい」

「お母さん、もう忙しくしないで、座って少し休んで」時田浅子は時田秋染をソファに座らせた。「お母さん、病院で何か用事があるって言ってたけど、何?」

「今日ね、主治医が私の体調がだいぶ良くなったから、手術の予定を立てられるって言ったの」

「それは良かった!先生は日程を決めたの?」時田浅子は少し興奮して、母親の手をしっかりと握った。お母さんが手術を受ければ、回復できるんだ!

「先生は、私たちで相談して日程を決めてくださいって」

「もちろん、早ければ早いほど良いわ!お母さん、どう思う?」

「私もそう思ってたの」

「じゃあ、明日にしましょう」藤原時央が突然口を開いた。

時田浅子と時田秋染は彼の方を見た。

「明日なら私は時間があるから、病院で浅子に付き添えます」藤原時央はさらに付け加えた。

時田秋染はうなずいた。「先生も明日が一番良いと言っていたわ」

「お母さん、明日じゃ急すぎない?明後日は?」時田浅子は静かに尋ねた。

「先生によると、明後日は会議があるから、明日手術をしないと来週の火曜日まで延期になるって」

時田浅子は少し迷っていた。

明日お母さんが手術を受けるなら、彼女と藤原時央はどうやって離婚手続きに行けばいいの?

「浅子、明日何か予定があるの?」時田秋染が時田浅子に尋ねた。

「ううん、何もないわ。じゃあ明日にしましょう」時田浅子はようやく決心した。

藤原時央の目に一瞬笑みが走った。

「じゃあ先生に電話して、いくつか手続きをしてもらわないといけないわ」

「わかった」時田浅子はうなずいた。

時田秋染は医師に電話をかけ、すぐに医師が病室に来て、手に手術の同意書の束を持っていた。

時田浅子は医師の手術の説明を聞きながら、一枚一枚署名していった。

最後の一枚に署名し終えても、彼女の気持ちはまだ緊張していた。

「藤原奥様、時田様の手術は明日の朝8時に予定しています。7時頃に病院にいらしてください。他には特にありません。では、私は先に失礼します」