第284章:藤原さまの別の形の寄り添い

お風呂を終えた時田浅子は髪を拭きながら、携帯を手に取って確認した。

携帯にはメッセージの通知が一つあった。

【スポンサー】:寝た?

【打ち上げられたクジラ】:ちょうどお風呂に入ってきたところ。いつもは10時半前には寝てるよ。

【スポンサー】:じゃあ、あと30分くらい話せるね。

【打ち上げられたクジラ】:あなたは睡眠障害なの?それとも他に何か理由があるの?他の治療法は試したことある?やっぱり病院で検査したほうがいいよ、病状が悪化しないように。

【スポンサー】:心配してくれてありがとう。医者には診てもらったよ。

【打ち上げられたクジラ】:それならよかった。

藤原時央は時田浅子の返信を見て、もう話題がないことを知りながらも、どうでもいい話を送り続けた。

今日、彼女の母親が手術を受けたのだから、彼女の心は表面上見えるほど平静ではないはずだ。

これも彼なりの寄り添い方なのだろう。

10時半、彼は時間通りに会話を終えた。

【スポンサー】:おやすみ。

【打ち上げられたクジラ】:おやすみ、良い夢を。

時田浅子は携帯を置くと、密かにほっとした。やっとこの気まずい会話が終わった。

この人は彼女が想像していたほど厄介ではなく、過度な要求もなかった。彼女の声が彼を癒せるなんて、それはそれで良いことだと思った。

翌日、時田浅子は起きるとすぐに病院に電話をかけた。夜中に母親は目を覚まし、今は全て順調で、今日は30分の面会時間があるという。

彼女は午後に行くことにした。

午前中はレコーディングスタジオへ。

ビルの下に着くと、江川楓もいるのが見えた。

彼の手には箱が一つあり、見たところ藤原時央の荷物のようだった。

「若奥様」江川楓は前に進み挨拶した。「藤原若旦那の荷物を取りに来ました」

「彼は昨夜帰ってこなかったの?」

江川楓は少し驚いた様子で、「若奥様、藤原若旦那は昨夜、自分の住まいに戻られました」

「そう」時田浅子は短く返した。

「若奥様、失礼します」

「はい、どうぞ」

江川楓は藤原時央の荷物を持って去っていった。

時田浅子はしばらく我に返れなかった。

藤原時央は昨夜もう引っ越したのか?

ここは明らかに彼の家なのに、本当なら出ていくべきは彼女のはずだった。