「時田浅子、覚えておきなさい。これからは二度と私の世界に入ってこないように」藤原時央は冷たい声で言った。
「覚えておくわ」時田浅子は、はっきりと覚えているだけでなく、それを実行できると思った。
手続きを終えて、時田浅子はその赤い離婚証明書を見つめながら、どんな気持ちなのか自分でもわからなかった。
彼女はついに望んでいた結果を手に入れた。
藤原時央が彼女に提示した補償はすべて断った。この結婚を終わらせることができたことが、彼女にとって最高の結果だった。
藤原時央は車の中で、手にした離婚証明書を見つめていた。
終わったのだ。
終わったのは、この結婚だけではない。
彼の人生で初めての心の動き、そして、何の病もなく終わったこの感情も。
江川楓は車を発進させ、時田浅子の前に停めた。