彼女の心臓は思わず締め付けられた!
藤原時央は昨夜も、このホテルに泊まっていたの?!
「先輩、先に中に入りましょう。後で出ましょう」時田浅子は柳裕亮の腕を引っ張って、ホテルのロビーに入ろうとした。
彼女は藤原時央と顔を合わせたくなかった。
その高級車のドアが突然開き、高級な革靴が先に地面に着いた。続いて、ピシッとしたスーツの脚が見えた。
藤原時央はスーツ姿で車から降りてきた。
彼の視線は時田浅子と柳裕亮の上に落ちた。
時田浅子は柳裕亮の腕をしっかりと組み、二人はとても親密だった。
この仕草から見ると、時田浅子は確かに柳裕亮に対してストレス反応を起こしていない!
時田浅子は藤原時央が彼女を見つけたことに気づき、逃げることができず、仕方なくその場に立ち尽くした。
柳裕亮は時田浅子を見下ろし、彼女の緊張と落ち着かない様子に気づいた。
彼は逆に時田浅子の手を握り、笑顔で藤原時央に挨拶した。「藤原様、なんという偶然。あなたも昨日このホテルに泊まっていたんですか?」
「時田浅子、こっちに来なさい」藤原時央は時田浅子を呼んだ。
「藤原様、今日は私が時田浅子を学校まで送りましょうか?ちょうど一緒なので」柳裕亮の声が再び響いた。
「今日、時田浅子は学校に行かない。彼女と私にはいくつか用事がある」藤原時央は柳裕亮と話していたが、視線はずっと時田浅子にじっと向けられていた。
時田浅子は顔を上げて藤原時央を見つめ、彼の言う用事が何なのか理解できなかった。
「時田浅子、今日行かなければ、君がまだ何か未練があって、手続きをしたくないと思うかもしれない」藤原時央はさらに言った。
これで時田浅子は理解した。
藤原時央は彼女と離婚手続きをしに行くつもりだった!
彼女はすぐに柳裕亮の手を離した。「先輩、先に学校に戻ってください。この用事が済んだら、学校に戻ります」
柳裕亮はもう主張せず、うなずいた。「じゃあ学校で待っているよ」
「はい」時田浅子は返事をして、藤原時央の車に向かって歩き始めた。
藤原時央は柳裕亮を一瞥してから、やっと身を翻した。
柳裕亮は藤原時央の凛とした姿を見て、今さらながら気づいた。藤原時央は今日、車椅子に座っていなかった。
しかも、藤原時央の動きを見る限り、足に障害があるようには見えなかった。
車はゆっくりと動き出した。