時田浅子は日が沈むまで川辺に座り続けていた。
最後の一筋の陽光が地平線の下に沈むと、辺りはすぐに暗くなった。
「ネット上のあれらのコメントは全て消えたよ。もうこのような発言は出てこないと思うから、気持ちを楽にして。ずっとそのことを考えていたら、気分に影響するよ」柳裕亮は優しく慰めた。
「うん」時田浅子は頷いた。
「もう遅いし、何か食べに行こうか?」
「いいよ」時田浅子もお腹が空いていた。彼女は時間を確認し、突然下校時間をとっくに過ぎていることに気づいた。
藤原時央は学校に彼女を迎えに行かなかったのだろうか?
もし行っていたら、彼女を見つけられなかった時点で必ず連絡してきたはずだ。
彼が迎えに来なくて丁度良かった。彼に会いたくなかったのだから。
「今日は何を食べるか、僕が決めていいかな?」柳裕亮は運転しながら時田浅子に尋ねた。
「いいよ」時田浅子は小さな声で答えた。
彼女はただお腹が空いていて、何かを食べる必要があっただけで、何を食べるかは気にしていなかった。
柳裕亮は車を運転し、彼があらかじめ予約しておいたレストランへと向かった。
藤原時央はまだ渋滞に巻き込まれていた。
ボディガードから電話が入った。
「藤原若旦那、若奥様はその河川敷を離れて、市内の方へ向かったようです」
「彼女はまだ柳裕亮と一緒なのか?」
「はい」
「彼らがどこへ行ったか見て、また連絡してくれ」
「かしこまりました」
30分後、藤原時央は再びボディガードからの電話を受けた。
「藤原若旦那、若奥様は食事に行きました。レストランの位置はお使いの携帯に送りました」
藤原時央は電話を切り、携帯に届いたばかりのメッセージを確認した。
地図を開くと、時田浅子が行ったレストランと彼の現在地の間には、少なくとも2時間の道のりがあることがわかった。
それも道路状況が良く、渋滞がない場合の話だ。
今、道路は全く動かない渋滞状態だった!
彼がそのレストランに着く頃には、時田浅子と柳裕亮はとっくに食事を終えて出ていることだろう。
藤原時央は時田浅子に電話をかけようと思ったが、彼女の番号を見つけた時点で諦めた。
時田浅子が彼に電話をかけようとしなかったのに、この時点で彼が電話をかけても何の意味があるだろうか?