「後輩ちゃん!あらま、照れるわね!個室は準備できてるわ、何か必要なことがあれば、遠慮なく言ってね。ここは告白や求婚にぴったりの場所だって知ってるでしょ?必要なら、すぐに手配するわよ」
「忙しいなら行ってよ、何も必要ないから。ただ食事をしに来ただけだから」柳裕亮はその人を押しやって、立ち去らせた。
「後輩ちゃん、後でお兄さんが特製カクテルを作ってあげるからね」そう言うと、その人は時田浅子に向かってウインクしてから立ち去った。
「個室に行こう」柳裕亮は時田浅子を連れて二階へ向かった。
個室と言っても、実際は二階のテラスにあるバブルハウスで、それぞれのバブルハウスにはレースのカーテンが掛けられていて、プライバシーは十分に保たれていた。
時田浅子が中に入ると、テーブルの上に大きな赤いバラの花束が置かれているのが見えた。このバブルハウスの照明はあまり明るくなく、テーブルに置かれたキャンドルの方がむしろ明るいほどだった。
「時田浅子、メニューを見てみて。ここの料理はどれも結構いいんだ」柳裕亮はメニューを渡した。
時田浅子は遠慮せずにメニューを受け取って見始めた。
その頃、藤原時央はまだ渋滞に巻き込まれていたが、前の車がようやく亀のようにゆっくりと動き始めていた。
「藤原若旦那、前の車が少しずつ動き始めましたが、これからどちらへ向かいましょうか?」江川楓が藤原時央に尋ねた。
「完全に通れるようになってから考えよう」藤原時央は答えた。
彼も行き先が決まっておらず、どこへ行くべきか分からなかった。
突然、携帯が鳴り、またボディガードからのメッセージだった。
時田浅子と柳裕亮がキャンドルライトディナーを食べている写真だった。
撮影角度はあまり良くなく、距離も少し離れていた。しかし、雰囲気はぴったりと捉えられていた。
藤原時央はその写真を見て、気分が沈み、息苦しくなった。
彼は時田浅子との関係を改善しようと努力していたが、効果はほとんどなかった。これはすべて、彼の思い込みから来ているのかもしれない。
突然、彼の携帯が鳴った。
「時央、あなたも東環状道路で渋滞に巻き込まれてる?」斉藤若春の声が電話から聞こえてきた。
「ああ」藤原時央は淡々と答えた。