「困惑というわけではなく、ただ多くの時間と労力を費やしたのに、効果が少なすぎると感じているだけだ」藤原時央は自分の気持ちを口にした。
「時央、最高の感情とは双方向の歩み寄りよ。最初から互いに好意を持ち合うこと。あなたと時田浅子の関係は、私が見る限り明らかにそうではないわ。だからこそ、あなたはそのような感覚を持つのよ」
「双方向の歩み寄り」時央はその言葉を繰り返した。
また双方向の歩み寄りか!
彼は窓の外に目を向け、もう何も言わなかった。
斉藤若春もそれ以上何も言わなかった。
彼女は程々にするということを理解していた。
藤原時央はすでに彼と時田浅子のこのような状態に飽きているようだった。彼女には予感があった、この恋愛関係はきっと自然消滅するだろうと!
……
時田浅子と柳裕亮はレストランで食事を終えて出た。
「浅子、ネット上の件は、もう完全に収まったようだね。気持ちを楽にして、この件について考え込まないようにしたほうがいいよ」柳裕亮は慰めるように言った。
「もう大丈夫よ」時田浅子は顔を上げて柳裕亮を見つめ、感謝の笑みを浮かべた。「先輩、今日ずっと私に付き合ってくれて、おごってくれてありがとう」
「そんなの礼を言うことじゃないよ」柳裕亮は携帯を取り出して時間を確認した。「もう遅いね、どこに行くの?送るよ」
時田浅子は突然、自分がどこに行きたいのかわからなくなった。
彼女は藤原家の本邸に戻りたくなかったし、藤原時央のところにも行きたくなかった。ただ一人で静かに過ごせる場所が欲しかった。
「今日は一人でホテルに泊まりたいの」
「一人でホテル?」柳裕亮は少し驚いた様子だった。
「うん」時田浅子はうなずいた。
柳裕亮は周囲を見回し、ある方向に視線を固定すると、手で時田浅子に指さした。「あのホテルはいいよ、環境も良いし、あそこはどう?」
時田浅子は柳裕亮が指す方向を見て、うなずいた。「いいわ、あそこにしましょう。先輩、ここからそのホテルまで近いから、私一人で歩いて行くわ。送らなくていいよ」
「じゃあ、歩いて一緒に行くよ。さっきたくさん食べたから、ちょうど消化するのにいいし」
「わかったわ」時田浅子はうなずいた。
二人は歩道を歩きながら、ホテルの方向へ向かった。
……