「どうしたの?」柳裕亮が心配そうに尋ねた。
「目に何か入っちゃった」時田浅子が目をこすろうとしたが、手首を柳裕亮に掴まれた。
「こすっちゃダメ、何が入ったか見てみるよ」柳裕亮が時田浅子に近づいた。「動かないで、小さな虫みたいだね、すぐ取れるよ」
二階の来賓室の窓の前に、背筋をピンと伸ばした人影が立ち、表情を曇らせながら下の光景を見つめていた。
「取れた?」時田浅子の目から涙が溢れ、目が痛くてしみた。
「取れたよ」柳裕亮は振り返ってティッシュを一枚取り、時田浅子に渡した。
時田浅子は目頭の涙を拭いたが、まだ目の不快感は残っていた。
「この後は二人の影絵芝居の演者のシーンだけど、上の来賓室で少し休んだ方がいいんじゃない?」
「うん」時田浅子はうなずいた。
彼女は立ち上がり、二階の来賓室へ向かった。