藤原時央は頭を下げて一瞥すると、そのカードには確かに時田浅子のサインがあった。
「ペンはある?」彼は小声で湊に尋ねた。
「どうぞ」湊は急いでペンを持ち上げ、藤原時央に渡した。
藤原時央は時田浅子の名前の隣に自分の名前をサインした。
「藤原社長、お手数ですが手形も押していただけますか」
「手形?」藤原時央も少し驚いた様子だった。
「はい、ほら、これが時田浅子さんが口紅で押した指紋です。あなたもここに一つ押してください。そうすればハートの形になって、二人が相思相愛で心が繋がっていることの証明になります」湊は筋の通った説明をした。
「相思相愛で心が繋がっている?」藤原時央の目の奥に笑みが浮かんだ。
突然、彼は時田浅子の方へ歩み寄った。
時田浅子は背後から聞こえる足音に振り返ると、あやうく藤原時央の胸に衝突するところだった。