第365章:子供でさえも彼らのCPファン

柳裕亮の声はとても優しく、時田浅子に温かさを感じさせた。彼女にとって、まるで兄のように彼女を気にかけてくれているような感覚だった。

「ありがとう、先輩。でも本当に大丈夫です。私一人でできますし、それに多くのものは必要ないので」時田浅子は丁寧に断った。

柳裕亮は少し落胆した。彼は一歩前進しようとした時、時田浅子が見せる距離感がこれほど強いものだとは思っていなかった。

二人は適当な場所で食事を済ませ、撮影現場に向かった。

遠くから、彼女はある人影が劇場の外で彼女を待っているのを見た。

これは昨日藤原時央が連れてきた森山緑という女性ではないか?

「時田さん、こんにちは」森山緑は前に歩み寄り、笑顔で時田浅子に挨拶した。

「昨日も言ったでしょう?私はアシスタントが必要ないんです!」時田浅子は困ったように言った。

「時田さん、昨日の夜、藤原社長にこのことを伝え忘れたのではないでしょうか。今日は契約解除の連絡を受けていませんので、定時に出勤するしかありませんでした」森山緑は笑顔で答えた。

柳裕亮は森山緑の言葉を聞いて、時田浅子は昨夜も藤原時央と一緒だったのかと考えずにはいられなかった。

「私...彼に言うのを忘れていました。今日は必ず覚えておきます」時田浅子はそう言うと、足早に劇場内に入った。

時田浅子が座るとすぐに、森山緑が彼女の側に来た。「時田さん、やはり私があなたのメイクをしましょうか?自分でアイラインを引くのは難しいでしょう」

この一言は、要点を突いていた。

時田浅子は確かに不器用で、昨日森山緑が彼女のメイクを直した時、うまくいかなかった部分をすべて救ってくれた。

「ありがとう」

「時田さん、どういたしまして。これは私の仕事ですから」

森山緑はそう言うと、時田浅子のメイクを始めた。

時田浅子は静かに座り、彼女が最も難しいと思っていたステップを簡単に終えた。彼女はこっそりと森山緑を何度か観察し、直感的に森山緑はアシスタントのようには見えないと感じた。

森山緑の能力は、どう見ても一人で責任を持てる女性経営者のようだった。

一方、柳裕亮はまだ機材の調整準備をしていた。

昨日は彼らが時田浅子を待っていたが、今日は時田浅子が彼らを待つことになった。

「浅子姉さん!」澄んだ子供の声が響き、昨日撮影した子役の湊が彼女の方に走ってきた。