時田浅子は病室に来ると、時田秋染はちょうど食事をしようとしていた。
時田浅子を見たとき、彼女は一瞬驚き、急いで時田浅子の後ろを見たが、藤原時央の姿はなく、目に失望の色が浮かんだ。
「浅子、どうしてきたの?」
「今日は撮影がスムーズに進んで、早く終わったから、お母さんに会いに来たの」時田浅子は前に進み、テーブルの上に並べられた料理を見て、「わぁ、いい匂い。この料理はどこのレストランのもの?美味しそうね」
「どこのレストラン?こんな料理を作れるレストランがあると思う?このチキンを見てごらん」時田秋染はチキンスープの入った椀を持ち上げ、時田浅子の前に差し出した。
時田浅子は香りを嗅いで、「この香りは何か懐かしいわ」
「これはお爺さまが育てた鶏よ。それに、あなたの姑が直接持ってきてくれたのよ」時田秋染はスープを置き、時田浅子の表情を観察した。
「お母さん、私はもう藤原時央と離婚手続きを済ませたわ。藤原奥様はもう私の姑ではないの。あの人たちに取り入ろうとしないで」時田浅子は優しく言った。
「浅子、お母さんに正直に言って、あなたは本当に時央のことが好きじゃないの?」時田秋染には理解できなかった。
もし藤原時央のような人でさえ彼女の浅子の心を動かせないなら、この世界で浅子の目に適う人がいるのだろうか?
「お母さん、藤原時央は確かに優秀だけど、好みは人それぞれでしょう?私が彼を好きじゃないとダメなの?自分の望む生活を送り、自分の行きたい道を歩くことはできないの?」
「好みは人それぞれ?じゃあ、お母さんに教えて、あなたの目に適う人はいるの?」
「そんなこと考える余裕はないわ」
「この前、荷物を持ってきてくれたクラスメイト、男の子だったわよね?」時田秋染が突然尋ねた。
「そうよ」時田浅子はうなずいた。
「あなたが好きな人なの?」
「お母さん、男女の間には恋愛感情しかないと思うの?好きだの何だのじゃないと普通じゃないと思うの?」
「つまり、あのクラスメイトのことも好きじゃないってこと」
「そうよ、彼とは普通のクラスメイトの関係だけ。彼がプレゼントを持ってきてくれたのは、彼が気配りができる人だからよ」
「そのクラスメイト、柳裕亮っていうんじゃない?」時田秋染がまた尋ねた。
「お母さん、どうして彼の名前を知ってるの?」