鈴木真弦は困り果てた顔をしていた。彼だって手ぶらで来たくなかったのだ!
「今日来たのは藤原社長に言われたからじゃなくて、自分で様子を探りに来たんです」
この表現は本当に...的確だ。
「私には分かります、時田さんはこの柳裕亮のことが好きではないようですね」森山緑はゆっくりと言った。
「本当ですか?森山さん、あなたはいつも人を見る目がありますね!信じますよ!」鈴木真弦はすぐに自信を取り戻した。
「でも時田さんは、藤原社長のことも好きではないようですね」森山緑はさらに言い足した。
鈴木真弦は一気に空気の抜けた風船のようになった。
彼は脇に寄って、携帯を取り出し藤原時央に電話をかけた。
藤原時央は着信を見て、鈴木真弦が密かに撮影現場に行ったことを知っていた。また、今日の撮影がすべて終了したことも知っていた。
彼は携帯をスワイプして、電話を切った。
切られた?鈴木真弦は呆然とした顔をした。
彼はもう一度命がけで電話をかけたが、一度だけ鳴って切られてしまった。
藤原社長はまったく気にしていないのだろうか?
「浅子ちゃん!」突然声が響き、白沢陸が大きな花束を持って入ってきた。
その花束には美しいレースが結ばれており、まるでウェディングドレスを着た小さなお姫様のようだった。さらに、花の上には輝く王冠のヘアアクセサリーが置かれていた。
「白沢三様までいらっしゃって、女王様の王冠まで持ってきたなんて」森山緑は冗談めかして言った。
鈴木真弦は困った顔をした。
しかたない、彼の藤原社長は電話にも出なくなっていた。
彼はまだ諦めきれず、先ほど撮った柳裕亮が時田浅子に花を贈る写真を藤原時央に送った。
そして後ろにメッセージを追加した:【藤原社長、柳裕亮は絶対にクランクアップパーティーで奥様に告白するつもりです!】
藤原時央の携帯画面がまた明るくなり、一瞥した後、頭を下げて仕事を続けた。
鈴木真弦はいつまで経っても返事を待てなかった。
藤原社長は彼のメッセージを見たのだろうか?
本当に少しも焦っていないのか?
まったく、皇帝は焦らないが、焦るのは...いや!
彼が焦る必要はない、自分の妻じゃないんだから。
白沢陸は花を時田浅子に渡した後、中から王冠のヘアアクセサリーを取り出した。