藤原時央と老人が水に入り、時田浅子は手すりのそばに立って、心の中で少し興奮していた。
さっきまで水は澄んでいて、水の中を泳ぐ魚が見えていた。
人が入ると、魚たちは慌てて泳ぎ回り、池全体の水が濁り始めた。
「どうやって捕まえるの?」時田浅子はこの時、自分が水に入らなくて良かったと安堵した。
「濁った水で魚を捕る。」老人は笑いながら答えた。
藤原時央も明らかに戸惑っていて、網を持ちながらどう使えばいいのか分からない様子だった。
老人は藤原時央を見て、「時央、見ていろ!」と言うと、すぐに手にした網を持ち上げ、水中に叩き込んだ。
網がかぶさった場所では、魚が激しく暴れ、水しぶきが飛び散り、老人の顔中が水で濡れた。
「老人、一網で沢山の魚を捕りましたね!」安藤さんは驚いて叫んだ。
老人は手を伸ばして触ろうとしたが、やはり年齢のせいか、少し腰を曲げただけで無理だった。
「時央、お前が来て、大きいのを捕まえろ。」老人は藤原時央に言った。
藤原時央は少し抵抗を感じていた。特にこの濁った水の池を見ると、全身の毛が拒絶反応を示し、全て逆立っていた。
「藤原若旦那、バケツです!」時田浅子は手すりに身を乗り出し、急いでバケツを差し出した。
時田浅子の期待に満ちた表情を見て、藤原時央はゆっくりと腰を曲げた。
彼がやっと一匹の魚に触れたところで、それが最大のものかどうか確認する前に、老人は網を持ち上げた。
下の魚は狂ったように二人の体に向かって飛びかかり、何匹かは水面から飛び出した。
「わぁ!」時田浅子は驚いて声を上げた。
彼女はこのような光景を見たことがなかった。
藤原時央の手にはしっかりと魚が握られていた。特別大きくはないが、小さくもなかった。
「フナだな、後で浅子のためにスープにして飲ませよう!」老人は嬉しそうに言った。
時田浅子はバケツを持ち、必死に藤原時央に差し出し、魚が彼の手から逃げないかと心配していた。
藤原時央が魚を持ち上げた瞬間、魚の尾が突然動き、彼の頬にぴったりと当たった。
時田浅子:……
藤原時央の白い顔色が突然霜のように冷たくなった。魚の尾には泥水がついており、彼の顔に付いた跡がはっきりと見えた。
時田浅子は藤原時央が魚を放してしまうのではないかと心配したが、幸い、彼は魚に叩かれても、しっかりと握っていた。