「先輩、私はまだ授業があるので、この授業が終わったら、学校のカフェで会いませんか?」時田浅子から積極的に提案した。
「いいよ、いいよ、待ってるよ」柳裕亮はすぐに頷いた。
授業が終わると、時田浅子は大川先生に研究室に呼ばれた。
「時田さん、昨日風間監督の『宮廷の陰謀』の放送が始まったわ。あなたの声優を聞いたけど、とても素晴らしかったわよ」大川先生は笑顔で言った。
長年教鞭を執ってきた彼女は、優秀で向上心があり学ぶ意欲のある学生に対して、決して褒め言葉を惜しまなかった。
「大川先生がこの機会を与えてくださって、ありがとうございます。どうしてこんなに早く放送されたんですか?前は放送日が決まっていなかったはずですが」
「ある作品に問題が生じて、一時的に放送できなくなったから、風間監督のドラマを先に放送することになったのよ」
「なるほど」
「これはいいことよ。放送中に『天籟の饗宴』の収録にも間に合うから、そうなれば、あなたの知名度もどんどん上がっていくわ」
「大川先生、『天籟の饗宴』の収録日程も決まったんですか?」
「ええ、夏休み前の15日間で、まず第一回を収録して、夏休みに放送するの。その後は夏休み中に続けて収録して、ちょうど夏休み一杯で全部収録が終わるわ」
「それは素晴らしいです。全く授業に支障がありませんね」
「そうね」大川先生は笑顔で頷いた。「最近、たくさんの会社から契約のオファーがあるでしょう?」
「はい」時田浅子は頷いた。
彼女の仕事用の連絡先には、毎日たくさんのメッセージが届いていた。
「まだどの会社と契約するか決めていないの?契約する会社を選んで、『天籟の饗宴』の収録の時にスタッフを何人か付けてもらって、撮影を手伝ってもらうといいわ。本気であなたと契約したい会社なら、こんな小さなリクエストは断らないはずよ」
「はい」時田浅子は頷いた。
「私はこれから外出しなければならないから、また何かあったら話しましょう」
「わかりました、大川先生」
大川先生の研究室を出ると、時田浅子はすぐにカフェへ向かった。
柳裕亮はずっとそこで待っていた。彼はとても不安な気持ちで、時田浅子が先ほど言った会う約束が嘘で、実は彼に会いたくないのではないかと恐れていた。