「大月結弦?本当に彼なの?」藤原時央の眉がわずかに寄った。
「確かよ、大月結弦という名前だわ。彼の身分はよく分からないけど、今私につきまとって離れないの。それに...それに不純な意図を持っているわ。私と一緒に来た人たちは皆、彼を恐れているみたい。もう本当に困ってるの、あなたの助けを求めるしかないわ」斉藤若春はまた泣き始めた。
「住所を送ってくれ」
「わかったわ」斉藤若春は電話を切ると、目に成功の笑みが浮かんだ。
藤原時央は車に乗り込み、携帯を取り出して時田浅子にメッセージを送ってから、車を発進させた。
斉藤若春はトイレから出る勇気がなかった。
彼女は大月結弦を挑発したことで、その結果がどうなるか自分でもわかっていた。
藤原時央はもう彼女に会おうとしない。もし彼と会う機会を作り出し、二人の間に接点を生み出さなければ、彼女は完全に負けてしまうだろう!
だから、彼女はこの大月結弦という二世祖を挑発したのだ。
彼女と藤原時央には少なくとも5年の付き合いがある。藤原時央が彼女を危機から救わないはずがない!
外には彼女が連れてきた人たちがまだいて、大月結弦は彼女が逃げられないことを知っているので、そう急いで彼女を探しに来ることもないだろう。
彼女には藤原時央が「救出」に来るまで、十分に時間があった。
大月結弦の身分は公にできない秘密だった。
権力者の息子、それも私生児で、幼い頃から甘やかされ放題で、どれだけの問題を起こしたか分からない。
権力者の唯一の息子であるため、どんな大きな災難も誰かが背負ってくれる。
藤原時央は当然大月結弦を知っていたが、別の世界の人間で、これまで何の接点もなかった。
彼はまた、斉藤若春が大月結弦の手に落ちれば、良い結果にはならないことも知っていた。
斉藤若春は携帯を見つめ、すでに30分が経過していたが、藤原時央はまだ到着していなかった。
彼女の心は焦り始めていた。
「何見てんだ!みんな出ていけ!」と怒鳴る声が響いた。
斉藤若春の心臓が急に締め付けられた。
あの大月結弦がもうこんなに早く彼女を探しに来たのか?
「斉藤さん、トイレにこんなに長く行ってどうしたの?俺様が心配でたまらなかったよ!」
大月結弦の声が聞こえてきた。
斉藤若春は急に緊張した。