森山緑の顔に笑みが浮かんだ。「これは私の責任ですから。資料に慣れて録音できると思ったら連絡してください。録音スタジオにお連れしますよ」
「わかりました」時田浅子は頷いて答えた。
「では、お邪魔しませんね」
「緑ねえさん、さようなら」
森山緑が去った後、時田浅子はすぐに立ち去らなかった。このときカフェには人が少なく、彼女はそこに座って声優の資料を見ていた。
森山緑は彼女の仕事を整然と手配し、彼女は非常に楽に感じ、効率も上がった。
しかも、これらのコラボレーションの報酬も低くなかった。完全に声優界の大物の価格だった。
そのとき、数人がカフェに入ってきた。先頭にいたのは柳裕亮だった。
彼はすぐに時田浅子の姿を見つけた。
鈴木明も柳裕亮の視線の先を見て、言いかけて止めた。
あの夜、柳裕亮と時田浅子は姿を消し、彼らは何が起こったのか知らなかった。
柳裕亮は一晩中連絡が取れず、翌日になってようやく連絡が取れたが、怪我をしていた。
あの夜の出来事について、柳裕亮は一言も語らなかった。
長い間準備していた告白イベントも予定通りに行われなかった。
「あれは時田浅子じゃないか?」
時田浅子は自分の名前が呼ばれるのを聞いて、すぐに顔を上げて声のする方を見ると、柳裕亮たちがいた。
今話した人はすでに時田浅子の方へ歩いていた。
「時田浅子、なんて偶然だね」
「そうね」時田浅子は短く答えた。
数人が彼女の方へ歩いてきたが、柳裕亮だけがその場に立ったままだった。
鈴木明は数歩歩いたが、柳裕亮がついてこないのに気づいて、引き返した。
「裕亮、君と時田浅子の間に一体何があったんだ?」
時田浅子は柳裕亮の方を見て、彼がまだそこに立っているのを見つけ、自ら声をかけた。
「先輩」
柳裕亮はようやく歩き出し、時田浅子の方へ向かった。
彼が来ると、クラスメイトたちは自動的に彼のために席を空け、彼と時田浅子が一緒に座れるようにした。
「時田浅子、先輩は言ってなかった?私たちが撮影した短編が学校の指導者たちに大絶賛されて、ある映像コンテストに推薦されたんだよ。もしかしたらテレビでも放送されるかもしれないよ!」
時田浅子は驚いた顔をした。