彼の声は低音砲のようで、魅惑的な磁性に満ちていた。時田浅子は声に敏感で、藤原時央の声はちょうど彼女が抗えないタイプだった。
藤原時央は満足げに彼女を抱きしめていた。温かく柔らかな玉のようで、この数日間の彼女への思いは波のように彼の心の中で高まっていた。
彼は時田浅子の頬に顔を寄せ、軽く彼女にキスした。
時田浅子はあわてた。彼のキスは細やかに彼女の首筋へと移り、最後には唇に落ちた。
彼女はすぐに手を伸ばして藤原時央を押しのけようとしたが、彼に手首をしっかりと握られてしまった。
力の差により、彼女は彼の求めるままにするしかなかった。
藤原時央はこのキスに、彼の優しさのすべてを注いだ。
時田浅子の体は徐々に緊張がほぐれ、ふわふわと彼の腕の中に寄りかかった。彼女自身も気づいていなかったが、彼女の体はすでに藤原時央を受け入れていた。
前菜の甘味を味わった藤原時央は、すでに少しの満足を得ていた。
彼は時田浅子を抱き、彼の膝の上に座らせ、彼女の柔らかく骨のない小さな手を握っていた。
「浅子、僕が君と一緒にいた時、それは初めてだったんだ。君は気づかなかったの?」
時田浅子の顔はさらに赤くなった。
「もし私が斉藤若春と関係を持てるなら、私が昏睡状態になる前に彼女はすでに私の彼女、あるいは妻になっていたはずだ。君の目には、私はそんなに選り好みしない人間に見えるのか?誰とでも簡単に関係を持てるような。ん?」
時田浅子は彼の質問に答えられなかった。
藤原時央は彼が言うほど純粋なのだろうか?
彼女にはそんな気配が全く感じられなかった!
藤原時央は時田浅子がまだ黙っているのを見て、さらに辛抱強く説明した。「あの夜、私が着いた時、斉藤若春は大月結弦にトイレに閉じ込められていた。斉藤若春の服はすでに大月結弦に脱がされ、ほとんど裸同然だった。」
「どんな女性でもこのような状況に遭えば、恐怖で呆然としてしまうだろう。彼女が私の服を着て、手近なものを私のポケットに入れたとしても、それはあり得ることだ。彼女自身も覚えていないかもしれない。」
時田浅子は声を出さなかったが、心の中では思いが渦巻いていた。
彼女も自分の心がなぜ藤原時央を信じているのかよくわからなかった。