この数行の歌詞だけで、どうしてこんな反応が起きるのだろう?
「藤井監督、ほら、これが人気スターの魅力ですよ」演出チームの別のスタッフが歩み寄り、藤井監督の隣に座った。
「今の若者はこういうのに弱いんだ。初心を貫くのは正しいけど、資本がなければ、お金がなければ、この番組すら作れない。そんな状態で初心も何もあるものか」
藤井監督は何も言わず、深い思考に沈んだ。
この組の5人の出演者が録画を終えても、時田浅子は選ばれなかった。
最後のグループまで待つしかない。
番組スタッフはホテルを手配し、明日の撮影を続けやすくした。
時田浅子と森山緑たちも番組スタッフと一緒にホテルに宿泊することになった。
夜、ホテルの中華レストランで一緒に食事をした。
金恵は現れなかった。彼女は特別に休暇を取っていた。すでに出演済みで、明日の早い時間の録画現場に来る必要はなかった。
この時、彼女はもっと高級な別のホテルに滞在していた。
美容師を予約して顔のケアをしていた。
「今日、時田浅子が人前で私にクレンジング水をかけた件、絶対に許すわけにはいかないわ!」
佐木晴樹は彼女を一瞥した。
「晴樹兄さん、森山緑は今小さなエンターテイメント会社に入社して、バックがないって言ってたじゃない?どうして彼女はあなたにそんなことができるの?」金恵は話題を佐木晴樹に向けた。
佐木晴樹はそれを聞くと、顔色が一気に暗くなった。
彼はかつて森山緑の下で働いていたが、部下のタレントと関係を持ったため、森山緑に追い出された。
森山緑から受けた屈辱は、一生忘れることはないだろう。
「晴樹兄さん、前に教えてくれた情報は本当?私が時田浅子をやっつければ、会社は本当に大きなリソースをくれるの?」
佐木晴樹は振り向いて金恵を見た。「正直に言うよ。私たちの会社の最大の株主が誰か知ってる?」
「誰?」
「斉藤若春、斉藤さんだよ」
「前回会社に来たあの斉藤社長?」
「そう、彼女だ。彼女にはもう一つの身分があるって知ってる?」
「何なの?彼女はすでにあんなにお金持ちなのに、まだ何か身分があるの?」
「彼女はさらに藤原時央社長の彼女でもある」