「どなたの旦那様ですか?」時田浅子は困惑した顔をした。
「あなたの藤原様よ」
「何が私のよ!違うわ!」時田浅子の心は恥ずかしさでいっぱいになり、顔が赤くなるのを抑えられなかった。
森山緑の笑みはさらに深くなった。
昨夜、浅子が藤原時央に会いに来させなかった場面を思い出して、笑いたくなった。
あの藤原時央だよ!
妻の前では、こんなにも卑屈にならなければならないなんて。
彼女はCPを推す楽しさを見つけたようだった。なるほど、だからこんなに多くの人がCPを推すのか。
「もうすぐ夏休みでしょう。番組の収録以外は何も予定を入れていないわ。あなたの夏休みの時間を奪うのも心配だし、ある方の不満を買って、クビになるのも嫌だしね」
「緑ねえさん、もしあなたがクビになったら、私もすぐに契約解除して一緒に独立しましょう!」
森山緑の目が輝いた。「それはいい考えね!自由の香りがしてくるわ!でも、ある方はあなたとの契約を解除するのは絶対に惜しむでしょうね」
「緑ねえさん、なんで私をからかうんですか?」
森山緑は母親のような笑顔を浮かべた。「からかっているんじゃないわ。あなたとある方がとても相性がいいと感じるだけよ」
時田浅子の心は思わずときめいた。
突然、ある問題に気づいた。
いつからだろう、彼女は以前のように藤原時央を拒絶しなくなったのは?
彼女は自分がスポンジのようで、藤原時央が水のように、彼女の生活のあらゆる隙間に浸透し、最初は違和感があったのに、徐々に当たり前になっていくのを感じていた。
この感覚は怖かった。
「メイクが終わったら収録に参加できますよ」ドアの外から声がした。
「はい!」森山緑が返事をした。
桃はすぐに時田浅子の顔にゴールドラメをひと塗りした。
「できあがり!」
時田浅子は鏡を見た。こんなに厚化粧をしたことはなく、自分でも自分が見知らぬ人のように感じた。
収録が始まり、25のドアの後ろには時田浅子と残りの4人だけがいた。
彼女たち4人の登場シーンを撮り終えたら、最後の締めくくりとして全員が登場して顔見せをする。
これでこの回の番組収録は終わる。
「最後のグループの出演者を抽選します。最初に登場するのは誰でしょうか?」司会者の村上厳がそう言って、箱に手を入れ、最初の番号を引いた。
「22番!」