しかし、編集者は時田浅子のシーンを単に削除するのではなく、別のコピーとして保存していた。
実際、彼個人としては時田浅子のことをかなり気に入っていた。
だが、この世界はそれほど残酷なものだ。
……
時田浅子と森山緑はその後に起きたことを全く知らなかった。
森山緑は車を運転し、道路を走っていた。
「浅子、どこに行くの?送ってあげようか?」
「緑ねえさん、送ってもらわなくていいよ。前の方の適当なところで降ろしてくれれば大丈夫。私の住んでいるところはここからまだ遠いから、タクシーを拾えばすぐに着くから」
「わかったわ、ちょうど私も会社に寄らなきゃいけないし」森山緑は前方に車を停めた。
時田浅子は時間を確認すると、まだ午後2時だった。彼女はタクシーを拾い、市場で少し食材を買うことにした。
何日も母親と一緒に過ごせていなかったので、今日はゆっくり母親と過ごせる。
突然、彼女は藤原時央が昨日言ったことを思い出した。
収録が終わったら彼に電話するようにと言われていた。
もし彼に電話をかければ、確実に母親に会えなくなるだろう。
だから、彼女はきっぱりと今は電話しないことに決めた。もう少し遅くなってから、彼に一言伝えればいい。
時田浅子は食材を買い、大小の袋を持ってサンライト団地に戻った。
入口で警備をしていた若い男性がすぐに近づいてきて、非常に丁寧に挨拶をした。
「こんなにたくさん買い物されたんですね?エレベーターまで持ってお手伝いしましょうか?」
「大丈夫です、ありがとう」時田浅子は急いでお礼を言った。
「どういたしまして、お役に立てるのは私たちの光栄です」若い男性はそう言うと、熱心に時田浅子の手から食材の袋を受け取った。
時田浅子は一瞬驚いた。
若い男性はすでに袋を持ってエレベーターの方向に歩き始めていた。
彼女は急いで後を追った。
若い男性はエレベーターのボタンを押し、食材をきちんと置くと、「どうぞお入りください」と言った。
時田浅子が中に入ると、若い男性は親切にも閉じるボタンを押してくれた。
「本当に親切だわ!サービスの態度も素晴らしすぎる!」時田浅子は思わず感心した。
突然、彼女はエレベーターが以前と違うことに気づいた。空間の大きさは変わっていないが、内装が新しくなっていた。
とても高級な感じがする!