「それならば、どうぞご自由に」長谷監督は全く心配していない様子で言うと、立ち上がって去っていった。
時田浅子と森山緑もレストランを出た。
森山緑は車を発進させながら、時田浅子に尋ねた。「浅子、どこに行く?まずあなたを送ってから、資料の準備に取りかかるわ」
「サンライト団地に行くわ」
「わかった」
出発してすぐに、森山緑の携帯が鳴り始めた。彼女はすぐにBluetoothイヤホンをつけて電話に出た。
この電話は桃からだった。
「緑ねえさん、大変です!ネット上で浅子が番組を降りるという話が広まっています。明らかに世論を誘導している人がいます!」
「わかったわ」
時田浅子は森山緑の表情が非常に深刻なことに気づき、契約解除の件に関係しているのではないかと思った。
森山緑は信号を通過すると、突然路肩に寄せた。駐車位置を確保すると、時田浅子に言った。「ネット上で私たちの契約解除の件が既に暴露されているわ。ちょっと状況を確認するために止まるわ」
森山緑は携帯を取り出してネット上の情報を確認し始めた。
時田浅子も黙ってはおらず、自分の携帯も開いた。
【時田浅子はこの実力で、番組が与えた画面が少ないと文句を言うなんて、この番組が彼女の個人ショーだと思っているの?】
【一部の頭のおかしいファンが彼女を持ち上げすぎ。あの顔以外に何がいいのか私には分からない!ベテラン芸術家たちの前に立つと見劣りしすぎ】
【明らかに自分を主役だと思い込んでる!彼女は忘れてるの?この番組は自分の実力で勝ち上がるものよ。番組に参加した木村博史先生でさえ脱落したって聞いたわ。時田浅子って何様?】
【番組側も不運だね。番組が人気になったとたん、こんな恩知らずに出会うなんて】
時田浅子はこれらのコメントを見て、軽くため息をついた。
「あのコメントは気にしなくていいわ。多くは世論を誘導しているだけよ」森山緑は時田浅子を慰めた。
時田浅子は突然何かを思い出したように、すぐに姿勢を正した。「緑ねえさん、前に金恵は和楽所属だって言ってたよね?」
「そうよ、どうしたの?」
時田浅子はすぐに和楽という会社を検索した。そこには会社の紹介と組織構造が載っていた。
案の定、株主リストの最初に斉藤若春の名前があった。
彼女の心に疑問が浮かんだ。
この件は、斉藤若春と関係があるのだろうか?