白川健斗は微笑んで、「私は横に立っていよう」と言った。
「ふん、知らないとでも思ってるの?あなたは最初から藤原若旦那と若奥様を引き合わせようとしていたんでしょ!」
白川健斗は冷蔵庫からボトルの水を取り出して江川楓に投げ、「お前の藤原若旦那のだ」と言った。そして温めたミルクをカップに注ぎ、自ら運んで行った。
「浅子、ミルクを少し飲みなさい」
「ありがとう」時田浅子はミルクを受け取り、小声でお礼を言った。
「今はどこか具合が悪いところはある?」白川健斗は時田浅子に尋ねた。
「今は大丈夫です」
「じゃあ特別な処置は必要ないね」白川健斗は藤原時央の方を見て、「藤原若旦那、さっきは話の途中だったけど、代表として交渉するって何の話?具体的には何なの?」
「京都病院が海外から薬品を導入する交渉だ」藤原時央はゆっくりと答えた。
時田浅子の心に不思議な感覚が湧き上がり、思わず藤原時央を見つめた。
京都病院といえば、彼女の母親が入院している病院ではないか?
藤原時央が言っている新薬とは一体何だろう?なぜか宮本凪が話していたことと同じ事のように感じるのだが。
「確か、あなたは京都病院の株式をわずかしか持っていなくて、経営権はあなたにはないはずでは?」
「私の持株比率は変わった」藤原時央はさらりと言った。
「いつの話だ?」白川健斗は驚いた顔をした。
「今夜だ」
「今...今夜?」
時田浅子は突然、宮本凪が受けた電話でもこの件について触れていたことを思い出した。
「明日時間通りに来てくれ」藤原時央は白川健斗に指示した。
「わかりました」白川健斗はうなずいた。
時田浅子は藤原時央に聞きたいことが山ほどあったが、この状況では口を開くのも難しく、とりあえず黙ってミルクを飲むしかなかった。
彼女が飲み終わるとすぐに、藤原時央は立ち上がって彼女の方へ歩いてきた。
「もう遅いから、私たちは先に帰るよ」そう言うと、彼は時田浅子を毛布ごと抱き上げた。
「藤原若旦那、私は自分で歩けます」時田浅子は小声で抗議した。
「抱きたいんだ」
時田浅子:……
白川健斗は笑いながら彼らを玄関まで見送り、手を振った。
時田浅子は車に乗り込むと、少し内側に移動した。藤原時央は二人の間の大きな隙間を見て、長い腕を伸ばして彼女を自分の腕の中に引き寄せた。