電話の音が突然鳴り響き、階段の踊り場では特に大きく聞こえた。
藤原時央は時田浅子から手を離し、ポケットから携帯電話を取り出した。
時田浅子はようやく安堵のため息をついた。
藤原時央は身を翻し、電話に出た。
「ああ、今夜時間を作って会いに行く」たった一言だけ返事をして、電話を切った。
電話をしまうと、藤原時央は笑みを浮かべて時田浅子を見つめた。「ここが病院の階段じゃなくて、私たちの家のベッドだったらどんなに良かったか」
時田浅子の心に怒りが湧き上がった。
「あなたと私が一緒にいるとき、それ以外に何もすることがないの?」彼女は藤原時央に問い返した。
しかも、彼は彼女の気持ちや意思を全く考慮していない。
こんな状況で、彼女にそんな気分になれるはずがない。
藤原時央が答える前に、時田浅子は隣のドアを開けて出て行った。