林聡明は挨拶もせずに外へ向かって歩き出した。
個室には、林清子と宮本凪だけが残された。
「凪兄さん、さっきのこと全部見たでしょう?姉さんはもう誰かと一緒にいるのよ。彼女は今、藤原時央の妻なの。あんなに完璧な男性がそばにいるのに、どうして姉さんがあなたと一緒になれると思うの!」
「林清子、もう一度言うが、私を凪兄さんと呼ぶな!俺がお前を好きじゃないのは、浅子のせいじゃない!もしお前とお前の母親が俺を騙さなかったら、俺と浅子がすれ違うことなんてなかったはずだ!」
林清子の心は刃物で深く切り裂かれたようだった。
彼女は林家に戻ってきた日から、自分の目的をはっきりと理解していた。彼女は時田浅子に取って代わりたかった。時田浅子が持っているすべてのものを、彼女も手に入れたかったのだ!