この時、上層部も斉藤若春を巻き込むことはないだろう。
斉藤若春はブリス家の養女であり、ブリス家が丹精込めて育て上げた人物だ。その策略も手腕も侮れないものがあり、彼は絶対に時田浅子と斉藤若春を正面衝突させるわけにはいかなかった。
斉藤若春はまだ京都病院の研究プロジェクトを狙っている。彼らはようやく餌を投げ入れたばかりで、網を引き上げる時ではなかった。
「浅子、お母さんがこんなに大きな傷を負ったことで、君が心を痛めているのは分かる。これからは絶対にこのようなことが起きないようにする。お母さんに二度と傷を負わせないようにするよ、いいかい?」
彼がそう言うのを聞いて、時田浅子の心はさらに苦しくなった。
ゆっくりと顔を向けて藤原時央を見つめ、「わからないわ。あなたの側にはこんなに適した、しかもあなたが心動かされて結婚したいと思った女性がいるのに、どうしてあなたは私にこだわるの?」