あの小太りの子が時田浅子の胸に甘えているのを見て、藤原時央は突然子供が欲しいという気持ちが薄れた。
小太りの子は白沢清志の家の子だから、気に入らなければすぐに送り返せばいい。
もし自分たちの実の子だったら、どこに捨てるというのか?
しかし、子供を作らなければ、何で浅子を一生縛り付けておけるだろうか?
藤原時央は考えれば考えるほど憂鬱になった。
どうして自分がこんな状況に陥ってしまったのか、浅子が自分から離れられなくなるという自信が少しもないのだ。
いつの間にか、藤原時央も眠りについた。
……
翌日早朝、時田浅子は早くに起きて朝食の準備をしていた。
団団はまだ起きていなかった。
藤原時央はうとうとしながら、習慣的に手を伸ばして時田浅子を抱き寄せようとしたが、手を置いたところで団団の丸い小さなお腹に触れ、すぐに目を開けた。
今日こそこの小太りを送り返さなければ!
彼はすぐにベッドから降りて外に向かった。
時田浅子はすでに朝食の準備をほぼ終えていた。
藤原時央はキッチンに来ると、何も言わずに背後から時田浅子を抱きしめた。これでようやく心の中のぽっかり空いた喪失感が埋まった。
時田浅子は藤原時央がなぜそんなにべったりなのか分からなかった。
「団団は起きた?」
「まだだよ。後で白沢陸に電話して、迎えに来てもらおう」
「どうして?さっきおじいちゃんから電話があって、私たちに食事に来てほしいって。もう承諾したから、団団も連れていくつもりよ」
「おじいさんが白沢清志が子供を私たちに押し付けたことを知ったら、きっと良い顔しないぞ」
「おじいちゃんはあんなに白沢陸のことが好きなのに、どうして白沢清志には良い顔をしないの?」時田浅子は、あの時老家で偶然おじいちゃんと藤原時央の会話を聞いたことを思い出した。
「そういうことは、一言二言では説明できないよ」
「じゃあどうする?とりあえず白沢陸に半日預ける?私たちが老家から帰ってきたら、また白沢陸に団団を送ってもらう?」
「白沢陸に引き取らせたら、なぜまた送り返してもらう必要がある?送るなら実の父親と母親のところに送るべきだ」
「中村佳奈恵と白沢清志はサーフィンに行ったんじゃないの?」
「あの夫婦は本当に遊び好きだな!」
時田浅子:……
「おじちゃんには行かない!」突然、幼い声が響いた。