大木嵐は時田秋染を彼女のために用意された住まいへと案内した。
それは裏庭に特別に用意された、独立した静かな部屋で、裏庭に直接通じていた。
彼女の世話をする介護士は隣の部屋に住んでいた。
老人は彼女のための手配を、細部に至るまで、行き届いたものにしていた。
「ありがとう、大木嵐さん。あなたと老人は本当に気配りが行き届いているわ」時田秋染は心から感謝した。
「もう家族なんだから、これからはそんな遠慮はいらないわ。私たちの知り合いの期間は短いけれど、あなたの性格はよく分かっているわ。決して人に頼ったり、迷惑をかけたりするタイプではないでしょう。ここに住むことに同意したのも、浅子のことを考えてのことね」
時田秋染の心の内は、大木嵐に完全に見透かされていた。
「前回の出来事は、きっと浅子の心に大きな影を落としたわ。あの子はすべての過ちを自分のせいにしてしまう。私は手術を受けたけれど、生きていても彼女の重荷になるだけ。できるだけ浅子に迷惑をかけないようにするしかないわ」
「そんな風に考えないで。私たちは家族なんだから、迷惑なんて考えることはないわ」大木嵐は時田秋染の心に何か懸念があるのではないかと心配していた。
「わかったわ」時田秋染はうなずいた。
「調子はどう?あまり疲れていないなら、少し案内するわ」
「疲れてないわ」
「じゃあ、まずはリビングに行きましょう。みんなリビングにいるはずよ」
大木嵐は時田秋染をリビングへと案内した。
老人と時田浅子たちはみんなリビングにいた。
団団は時田浅子にぴったりとくっついており、藤原時央の表情はあまり良くなかった。
「大木嵐が時田浅子を連れてきた。
「さあさあ、こちらにお座り」老人はソファの隅を指さした。
時田浅子は立ち上がって母親を支えた。
座るとすぐに、団団はすぐに時田浅子の膝に甘えてきた。
藤原時央は団団を引っ張って、脇に引き寄せようとした。
団団はすぐにズボンをつかんで振り返り、藤原時央を見た。
「おじさん、なんで僕のズボンを引っ張るの?先生が言ってたよ、勝手に人のズボンを引っ張る人は悪い人だって!」
藤原時央は呆れた表情を浮かべた。
この一言で、その場にいた全員が笑い出した。
時田浅子は団団のズボンを整え、優しく説明した。「おじさんはわざとズボンを引っ張ったわけじゃないのよ」