「その後、彼は留学し、ある教室で、隣に座っていた女子学生のバッグにぬいぐるみが付いていました。彼は自分をコントロールできず、そのぬいぐるみを手放すことができませんでした。その女子学生は心理学を専攻していて、彼の不調に気づきましたが、怖がるどころか、彼の感情を安定させるよう導いてくれました。」
「その日から、彼はその女子学生に心理的な治療をお願いしました。彼は必死に普通の人になりたいと願っていました。その治療は5年間続きました。」
藤原時央の話を聞きながら、時田浅子は胸が締め付けられるような感覚に襲われ、息ができないほどでした。
彼の語り口は淡々としていて、まるで他人の話をしているようでしたが、それでも彼女はその平静な口調の中に、彼の内なる葛藤と無力感を感じ取ることができました。