林聡明はこれまで斉藤愛梨の優しさに浸り、無条件に彼女を信頼していたが、一度疑い始めると、斉藤愛梨を見るたびに自分が馬鹿だったと思うようになった!
長年、斉藤愛梨に完全に操られ、彼女の手のひらで踊らされていたのだ。
もし、時田浅子が言ったように、彼が何も成し遂げていなかったら、斉藤愛梨は彼と一緒にいただろうか?
林聡明がまた黙り込むのを見て、斉藤愛梨は少し慌てた。
「聡明、私を信じて。私は本当にそんなことしていないわ。時田秋染と時田浅子が何か言ったの?あの母娘が私に対して持っている偏見と憎しみは、あなたも知っているでしょう」斉藤愛梨は説明しようとした。
「昔のことは、調べようと思えば詳細に調べられる。斉藤愛梨、本当に私の調査に耐えられるのか?」林聡明は突然尋ねた。
この一言で斉藤愛梨の顔色が青ざめた。
彼女の唇が動いたが、何の音も出なかった。
斉藤愛梨の反応を見て、林聡明はすでに答えを知っていた。
「私はもう時田秋染と離婚するところだ。お前はすぐに正式に私と結婚できるのに、なぜ時田浅子を誘拐して脅したんだ?」林聡明は怒りの声で問いただした。
「聡明、説明させて。あの時は怒りすぎていたの。彼女が私たちのことを公にして、あなたを公衆の面前で恥をかかせ、雲都の笑い者にしたから。彼女があなたが苦労して築いた財産を奪うのを許せなかったの!すべてはあなたのことを考えてのことよ」斉藤愛梨はすべての問題を林聡明のせいにした。
「俺のことを考えてだと?お前は昔、口を揃えて言っていたじゃないか。俺と一緒にいるためなら、何の名分も求めない、ただ一緒にいたいだけだと。あの言葉は本当だったのか?」
「もちろん本当よ!」斉藤愛梨は大声で反論した。「私がなぜここにいると思う?最初からあなたの事業のためじゃなかったら、どうしてあの一歩を踏み出したと思うの?」
斉藤愛梨が突然この件を持ち出さなければ、林聡明は思い出さなかっただろう。
藤原親父が裏で彼を助けていたと言っていたということは、当時斉藤愛梨がその一歩を踏み出さなくても、彼はそのプロジェクトを手に入れられたということだ。
この件に関わっていたのは斉藤愛梨だけでなく、山田広利もいた!
山田広利のことを思い出すと、林聡明は歯ぎしりするほど憎かった。