舞台の上で、モデルたちが新商品を披露していた。
舞台下ではフラッシュが絶え間なく光っていた。
彼女の出番になると、スタッフが案内に来て、何も心配する必要はなかった。
時田浅子は舞台に上がり、スポットライトに向かって歩いていった。
客席からすぐに歓声が上がり、人々の視線はすべて時田浅子に注がれた。
多くのモデルの中で、彼女は最も背が高いわけではなかったが、人々の視線を自然と引きつける存在だった。
彼女がそこに立つだけで、主役になった。
「時田浅子!時田浅子!」客席から誰かが抑えきれずに叫んだ。
「これは時田浅子の初めての広告契約よ!時田浅子のファンとして、絶対に応援しなきゃ!」
「私は時田浅子が持っているバッグが気に入ったわ、絶対に同じものを買うつもり!」
時田浅子は手のバッグを見せながら、何気なく客席を見渡した時、突然ある場所で視線が止まった。
薄暗い客席で、彼女は見覚えのあるシルエットを見つけた!
それは林清子だった!
森山緑は時田浅子の表情が変わったことに気づき、すぐに注意を促した。
時田浅子はすぐに我に返り、上品な笑顔を浮かべた。
彼女が再びその方向を見た時には、もう林清子の姿は見えなくなっていた。
このラウンドの展示が終わると、時田浅子はスタッフに舞台から案内された。
森山緑はすぐに近づいてきた。「浅子、さっきどうしたの?もう少しで表情管理を忘れるところだったわ。」
「ごめんなさい、緑ねえさん、私のミスです。」時田浅子はすぐに謝った。
「何か見たの?どうしてそんなに大きな反応をしたの?」
「ある人を見かけたんです。」時田浅子は森山緑を引っ張って休憩室へ向かいながら、ももちゃんに指示した。「ももちゃん、東さんを呼んできて。」
森山緑は時田浅子が東さんを呼ぶと聞いて、表情が一気に緊張した。
東さんは藤原社長が時田浅子につけた人で、運転手という名目だが実際はボディーガードだった。東さんの他にも二人いて、今日は全員が現場にいた。
「浅子、主催者に警備を強化してもらった方がいい?」森山緑はすぐに尋ねた。
「必要ありません。」時田浅子は首を振った。「さっき舞台で見た人は、私の異母妹です。彼女と私の間には深い確執があって、今日ここに現れたのは良くないことを企んでいるに違いありません。」