販売員は即座に橋本月見の前に歩み寄り、期待に満ちた様子で言った。「橋本さん、こちらへどうぞ。あの車は必ずご満足いただけます!」
陣内美念と島田香織は立ち上がって外へ向かい、橋本月見に手を振るのも忘れなかった。
4Sショップを出ると、島田香織は奈奈さんから電話を受けた。
「もしもし、奈奈さん、どうしたの?」島田香織は携帯を耳に当てて尋ねた。
「香織、すごく話題になってる動画があるの。これ、あなたじゃない?」奈奈さんの声は少し震えていて、とても興奮しているようだった。「LINEで送るわ。」
島田香織は電話を切り、携帯を開くと、スポーツウェアを着てキャップを被った少女が四人の不良をさっと蹴り飛ばす動画が映っていた。
陣内美念は島田香織の横に寄り、携帯の画面を覗き込んで不思議そうに聞いた。「これ、香織じゃない?」
「そうよ、誰が撮ったのかしら」島田香織は眉をひそめ、もう一度動画をよく見て言った。「久しぶりだから動きが鈍くなってるわ。これからは定期的に練習しないと。」
島田香織の言葉を聞いて、陣内美念は笑いながら言った。「練習しなくても、普通の人じゃ香織の相手にならないわよ。」
島田香織はLINEで「私よ」と二文字打って送信した。
メッセージを送ると同時に、奈奈さんからビデオ通話がかかってきた。
「香織、動画の人、本当にあなたなの?」
「私よ、どうしたの?」島田香織にはなぜそんなに興奮しているのか分からなかったが、奈奈さんの興奮した声に戸惑ってしまった。
「香織、あなた話題になってるのよ!この動画がネットで大人気で、みんなスポーツウェアを着た女の子を探してるの。そうだわ、もうすぐ金子おじいさんのドラマの撮影が始まるから、その時にこれがあなただって明かしましょう。どう?」
「奈奈さん、言う通りにしましょう。」島田香織はプロモーションには興味がなく、演技にしか興味がなかった。
「分かったわ、じゃあ忙しいでしょうから。私が手配しておくわ。」
島田香織は奈奈さんとの通話を終え、陣内美念と一緒に帰り道を歩き始めた。
陣内美念は隣の島田香織を見て、言った。「香織、相談があるんだけど。」
「何?」島田香織は不思議そうに陣内美念を見て尋ねた。
「今夜、鈴村おじいさんの八十歳の誕生日パーティーなの。一緒に来てくれない?」