028 赤ワインをかけられる

橋本月見は不満そうな顔で遠くにいる島田香織を睨みつけ、隣の藤原昭子の方を向いて不安そうに尋ねた。「本当に大丈夫なの?」

「絶対大丈夫よ!」藤原昭子は自信満々に橋本月見を見て、断言した。「私の言う通りにすれば間違いないわ!」

藤原昭子の言葉を聞いて、橋本月見は歯を食いしばって言った。「わかったわ、あなたの言う通りにするわ!」

藤原昭子は近くを通り過ぎる女性ウェイトレスのトレーから赤ワインを一杯取り、それを持って島田香織の方へ歩いていった。

「まあ、誰かと思えば島田香織じゃない」藤原昭子は優雅に手の中のワイングラスを軽く揺らしながら、挑発的に島田香織を見て尋ねた。「どうやってこっそり入ってきたの?」

陣内美念は藤原昭子の言葉を聞いて怒り、一歩前に出ようとしたが、島田香織に止められた。

「美念、犬の鳴き声が聞こえない?」島田香織は真面目な顔で陣内美念を見て、まるで本当に犬の鳴き声がしているかのように言った。

島田香織の言葉を聞いて、陣内美念はすぐに意図を理解し、とても協力的に言った。「本当ね、誰の家の犬が放されて人を噛みに来てるのかしら!」

藤原昭子は馬鹿じゃないので、すぐに反応し、険しい顔で島田香織を見つめ、赤ワインを直接島田香織に向かって投げかけた。

島田香織は眉をひそめた。藤原昭子がこれほどマナーを無視するとは思わなかった。手早くテーブルの上のケーキを取り、素早く藤原昭子の顔と体に投げつけた。

藤原昭子は信じられない様子で島田香織を見つめた。自分は島田香織のドレスを汚しただけなのに、島田香織は服を汚しただけでなく、彼女が丹精込めて施したメイクまで台無しにしてしまった。今夜は祖父の家で大恥をかいてしまった!

藤原昭子の心は突然悔しさでいっぱいになり、完全に崩壊しそうになって、思わず大声で叫んだ。「あぁっ!」

元々賑やかだった宴会場は一瞬にして静まり返り、全ての人の視線が藤原昭子に集中した。

島田香織は陣内美念の手を引いて二歩後ろに下がり、他の人々の見物の邪魔にならないようにした。

橋本月見は事を済ませて戻ってきたところで、藤原昭子の惨めな姿を見て、急いで近寄り、ティッシュを取り出して藤原昭子の顔を拭きながら、小声で尋ねた。「どうしてこんなことに?」