島田香織は足を止め、一瞬戸惑いながら言った。「申し訳ありません。部屋を間違えてしまいました!」
そう言いながら、島田香織は振り返ってドアの方へ向かった。
「待て!」
バルコニーの方から男の冷たい声が聞こえた。
島田香織が振り返ると、藤原航がバルコニーから部屋に入ってくるところだった。
部屋の明るい灯りが藤原航の黒い瞳に映り、彼は島田香織のドレスをじっと見つめていた。
「島田香織、お前は少しも成長していないな。三年前も、こうして俺のベッドに潜り込んだんだろう?」
藤原航は体の中の怒りを必死に抑えていた。誰が薬を盛ったのか考えていたが、もう考える必要もない。犯人はここに立っているのだから。
島田香織は眉をひそめ、先ほど彼女をここに案内したホテルマンの怪しげな様子を思い出した。今となっては全て明らかだった。誰かが意図的に彼女をこの部屋に誘導したのだ。