奈奈さんは島田香織を見つめる目が複雑な表情を浮かべていた。
スターキングエンタテインメントの他のタレントたちはほとんどがオーディションを通過して入社したが、島田香織だけは例外だった。
島田香織はオーディションを受けることなく、スターキングエンタテインメントに直接スカウトされ、さらに会社に慣れるために一日過ごしただけで、翌日には『スターロード』の撮影に入った。
『スターロード』はSランクの映画で、単独主演の大作だった。元々は所属の女優賞受賞者を起用する予定だったが、誰もが予想しなかったことに、主演女優の役を島田香織が獲得した。
奈奈さんは今まで二流以上のタレントしか担当していなかったが、今は会社上層部から他のタレントの担当を禁じられ、島田香織だけを担当することになった。
奈奈さんは最初、不満だった。島田香織は確かに国民的な知名度があり、容姿も悪くないが、演技力は別問題だと思っていた。
しかし、奈奈さんが島田香織本人を見たとき、思わず膝を折りたくなるほど驚いた。
盗撮された写真でも悪くなかったが、本人を見ると、まさに「天女のような美しさ」という言葉がぴったりだった。肌は白く滑らかで、美しい切れ長の目、高い鼻筋、桜色の唇は、目が離せないほどだった。
奈奈さんはそこで気づいた。会社上層部は島田香織の容姿に惚れ込んで、彼女に全てを賭けたのだと。
この視聴率重視の時代では、女優は美しければ、興行収入は保証されるものだった。
しかし、奈奈さんが島田香織の演技を見たとき、感動で涙が止まらなかった。
なんてこと!会社は私を見捨てなかった、未来の女優賞受賞者を任せてくれたのだ!
島田香織のような容姿と演技力を兼ね備えた人材は、会社にもそう多くはいなかった。
しかし、島田香織のスカウトは、一つのことを証明していた。スターキングエンタテインメントの内部の誰かが島田香織を囲っているということだ。
彼女は密かに島田香織と上層部の関係について調べたが、分かったのは上層部が島田香織の言うことを何でも聞くということだけだった。
まさか、上層部全員が島田香織の虜になっているのだろうか?
奈奈さんは頭の中の雑念を振り払い、島田香織を見上げて尋ねた。「そうそう、ネットで悪意のある書き込みが増えているんだけど、会社に対応してもらう?」